経済へのショックと繰越損失

さて、今回は、繰越損失の税収への影響を考えてみましょう。 「繰越損失の仕組み」の最後に引用した条文にあるように繰越損失は過去9年分しか認められません。 2001年に900の損失(欠損)を出し、その後、ずっと毎年100の利益を出しているケースを考えてみました。 繰越損失と法人税
利益前期からの繰越損失控除される繰越損失控除後の利益法人税次期への繰越損失
2001年△900900
2002年100900100800
2003年100800100700
2004年100700100600
2005年100600100500
2006年100500100400
2007年100400100300
2008年100300100200
2009年100200100100
2010年100100100
2011年10010025.5
一度、大きな損失を出すとその後安定してそれなりの利益を出していても、法人税は0という時期が続きます。そして、繰越損失がなくなると利益が変わらないのに、法人税は0から25.5へジャンプします。 国の税収という観点からみると、いくつかの会社がたまたま大きな損失を出しても、それほどの影響はありません。しかし、経済に大きなショックが発生し、たくさんの会社が同時に多額の損失を出すと、その後、GDPが安定し、企業の利益が安定して出ていても法人税収が大きく落ち込んだままという時期が続くことになります。 これは、ショックによる打撃から回復するために必要な期間です。上の例でも分かるように2001年から20011年までの利益の合計は100で、それに見合った税金25.5は得ているのですから、不当な優遇の制度とは言えないだろうと思います。 「銀行の税金増加 24年度決算」の最後で、銀行業界と繰り延べ税金資産を念頭に置いて次のように書きました。 今回の教訓は次の通りです。 1 長期にわたる不況の後に税収を回復させようと思ったら、企業の財務体質が改善するのをじっくり待つほかはないこと 2 財務体質の改善がある段階まで進むと、利益の伸び以上に税収が増えること 3 その間、経済を安定させる必要があること これは、「長期にわたる不況の後に」を「大きな経済的なショックの後に」と置き換えれば、金融危機リーマンショックなどすべての業界に大きな影響のある出来事についてもあてはまると思います。 では、日本の現状はどうなっているのでしょうか?次回、これを検討しようと思っています。 人気blogランキングでは「社会科学」の14位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング