今回は、「
経済へのショックと繰越損失」で説明した繰越損失と
法人税収の実績を見てみましょう。
国税庁の会社標本調査からのデータです。
次の表の通りです。
この表で繰越欠損金控除額というのは、その年の損益だけを考えれば所得があった企業について、その所得から繰越欠損金を差し引いた額です。簡単化していうとこの額に
法人税率をかけたものが、繰越損失があるため払わなくて済んだ
法人税です。
所得は、その年の所得から繰越欠損金を控除した後の所得です。
繰越損失と法人税 | 繰越欠損金控除額 | 所得 | 小計 | 法人税 | 次期への繰越損失 | 欠損法人割合(%) |
---|
2000年 | 12.1 | 36.8 | 48.9 | 10.6 | 94.5 | 68.4 |
2001年 | 10.1 | 39.6 | 49.7 | 10.9 | 79.7 | 68.3 |
2002年 | 7.7 | 32.8 | 40.5 | 9.2 | 70.4 | 68.9 |
2003年 | 10.4 | 32.8 | 43.2 | 9.1 | 78.9 | 68.1 |
2004年 | 12.8 | 38.9 | 51.7 | 10.2 | 79.3 | 67.0 |
2005年 | 13.0 | 42.5 | 55.5 | 11.1 | 70.8 | 67.1 |
2006年度 | 9.1 | 55.6 | 64.7 | 14.1 | 70.5 | 66.3 |
2007年度 | 9.6 | 55.2 | 64.8 | 13.5 | 69.9 | 67.1 |
2008年度 | 7.4 | 35.2 | 42.6 | 8.9 | 90.8 | 71.5 |
2009年度 | 9.4 | 30.3 | 39.7 | 7.8 | 80.7 | 72.8 |
2010年度 | 10.7 | 32.4 | 43.1 | 8.4 | 79.2 | 72.8 |
2011年度 | 9.7 | 33.9 | 43.6 | 8.6 | 76.0 | 72.3 |
毎年かなりの繰越欠損金が控除されています。このもとになっているのは毎年の控除前の所得と繰り越された欠損員です。繰越欠損金の水準は、一時下がったのですが、
リーマンショックでまた90兆円を超してしまいました。緩やかに減ってきていますが、なお、70兆円を超えていて
リーマンショックの前の水準を上回る高水準です。
欠損法人の割合も70%を超えたままです。控除額と所得を合わせるたもの、その年の本来の所得は
リーマンショックのあった年を上回っていますが、控除があるため
法人税は少なくなっています。税務面では
リーマンショックの影響を脱し切れていないといえるでしょう。2012年度で繰越欠損金の水準がどれぐらい下がっているか、いずれにせよ時間をかけてじっくり取り組む必要があります。
(注)正確に言えば、繰越が認められる期間は、平成13年4月1日前に開始した各事業年度において生じた欠損金額については5年、平成13年4月1日以後に開始した事業年度から平成20年4月1日前に終了した事業年度において生じた欠損金額については7年です。このような制度改正のが繰越欠損額に影響しています。
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