雇用と賃金を考える(2013年11月・常用労働者)

毎月勤労統計の11月分確報(http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/25/2511r/dl/pdf2511r.pdf)を見て行きましょう。

今回はフルタイム労働者、パートタイム労働者を合わせた常用労働者全体の動きを取り上げます。

まず、賃金から。

常用労働者の賃金は10月のマイナス傾向から、微妙に変化しています。(第1表)。

現金給与総額は、10月は-0.1%でしたが、11月は+0.6%に転じました。6月に+0.6%を記録して以来5か月連続してマイナスでしたので、いい動きです。23年の11月の水準には、まだ戻っていません。

現金給与のうち決まって支給する給与は、10月は-0.3%でした。これは-0.1%と、引き続きマイナスです。

決まって支給する給与のうち所定内給与は、10月の-0.7%とあまり変わりがない-0.6%です。

決まって支給する給与のうち所定外給与は、10月は+5.9%の高い伸びでしたが、11月も5.8%とほとんど変わりがありません。

現金給与総額のうち特別に支給される給与は、10月は+4.3%と一桁台の伸びでしたが、11月は+12.0%と二桁台の伸びです。

所定外給与や特別に支給される給与は、好調ですが、4月の消費税増税前の駆け込みの影響があるかもしれないので、基調を見る時は、私は所定内給与で基調を判断すると、-0.6%は、いい数字ではありません。もっとも、5か月前の11月に駆け込みが賃金に影響しているのかどうか、まだ、よく考えていません。

しかし、雇用は好調です。

8月まで1.0%未満の増加が続いていた常用雇用は、9月、10月と連続して+1.0%の増加になっていました。11月はさらに増加率が高まり1.2%の増加です(第3表)。2009年の4月に+1.1%を記録して以来52か月間連続して1%未満の増加であったことを考えると、3か月連続で1%を超え、しかも11月は増加率が高まったのですから、大いに結構なことです。

季節調整前の常用雇用指数は102.9で、過去最高です。また、季節調整済みでは102.7ですがこれも過去最高です。労働市場はタイト化は進行しているといっていいでしょう。「雇用と賃金を考える(2013年10月)」で、「名目賃金が上昇しやすい環境が整ってきていると思います。」と書きましたが、さらに整ってきていると思います。

賃金と雇用を合わせて考えると、労働者の受け取っている所定内給与全体は名目で、-0.6%プラス1.2%で0.6%の増加です。いいとも言えませんが、悪いわけでもありません。現金給与総額なら+1.8%で、これは好調といってもいいと思います。

これは直接税や社会保険料を除いた可処分所得を表すものではありませんが、これに目をつぶって、所定内給与を消費者物価総合指数(11月は+1.5%))で実質化すると所定内給与の総額は-0.9%、持ち家の帰属家賃を除く総合(11月は+1.4%)で実質化すると-0.8%になりますし、現金給与総額ならそれぞれ+0.3%、+0.4%です。マクロでみた勤労者の消費への所得面からの影響の判断は難しいところです。賃金を受け取る人数が増えたことの効果も、将来の見通しの改善の効果も考えなければなりませんし。

ところで、11月の一人あたりの総実労働時間が1.1%減っています。雇用の伸び1.2%と合わせると、労働投入量は+0.1%です。これを需要の伸びが弱いみるか、供給の限界に近づいているとみるかで労働市場のタイト化の判断は変わってくるのですが、私は、今のところ供給の限界とまでは言えないが需要の伸びが弱いわけではないとみています。

11月はフルタイムの動きに変化が出ているように思います。次回は、フルタイムの動きを検討する予定です。

(続く)

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