エレベーターとミクロ経済学

シンドラー社製のエレベーターの事故について18日の毎日新聞に面白い記事が載っていました。

事故の起こった独立系エレベーターの保守会社の技術系社員の証言です。

1 メーカーは自社系列ではない会社に設計図や点検マニュアルを渡さない。

2 大手メーカー系列から中途入社した社員が製品の知識を伝授しているが、大手以外のOBはほとんどいない。

3 設計図やマニュアルがないと、機械を調整しようとしても的確な方法が分からない。怖くてとても手をつけられない。

4 交換部品をメーカーに発注しても、あるはずの在庫がなかなか届かず待たされることがある。

5 メンテナンスに限界がある。5年、10年と連続受注してはじめて部品代も捻出できる。入札で1年毎に業者が代わるのでは部品交換もままならない。

これが本当の事故でなければ、ミクロ経済学のいい練習問題かもしれません。とはいえ、マンションの管理組合の役員さんにとっては、他山の石として学ぶことが多いようです。

まず、情報の非対称性の問題があります。管理組合は、普通、エレベータの保守点検の知識がなのが普通です。たまたま、居住者の中に専門家がいる場合があるかもしれません。一方、保守会社は知識、技術を持っているはずです。すると、管理組合を保守会社がだますとは言わなくとも、真実を語らなかったり、ポイントをはずして誘導するのは簡単でしょう。プロとアマチュアの差です。

このような場合、形式的には対等、あるいは入札をする事により、一見すると管理組合が優位に見えても、管理組合は実際には不利です。

このような場合、市場での決定は必ずしもいい結果をもたらしません。何らかの公的な介入が必要です。

しかし、それにしてもこの保守会社の経営者は自社がシンドラー社製のエレベーターの保守を行う能力がないことを知っていたのでしょうか?自社の能力の有無を知って、できないなら契約しないのが当然でしょう。

記事には「ブレーキの不具合を感じながら補修は一度もしていなかったことが明らかになっている。」とあります。少なくとも保守ができないことが分かった時点で契約を打ちきるべきだったでしょう。

とはいえ、そうはしない保守会社があるのですから、そのことを念頭に置いて契約すべきでしょう。

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