子育ては、1億8千万円の損?

児童手当 番外」にシーラカンスさんから、次のようなコメントをいただきました。コメントありがとうございます。

    一説によりますと、短大卒のフツーのOLさんがもし一生働いたら生涯賃金が2億円で、数年働いた後退職して出産・育児して手が離れる頃パートにつくと生涯賃金は2000万円なんだそうです。その差、なんと1億8000万円。この差をどうにも埋め難いために、女性たちはすべからく結婚をためらい、出産をためらうのですねー。

私はこの説を知りませんでした。大和総研が、今週の日経新聞の「ゼミナール」の「人口減少と経済 3」を書いていてこの説を説明しています。この記事のおかげで、この説がどんな資料を基にしているのか分かりましたので、この説を検証してみようと思います。最初にお断りしておきますが、個人が利用できるデータには限界がありますので、残念ながら部分的にしか検証はできません。

短大卒の女性が同じ勤め先で長い間働き続けた時の、賃金のデータに使われているのは厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の次の表です。これは平成15年の調査結果です。

http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-rou4/data15/10201.xls

この表はフルタイムの労働者の賃金を示しています。

「女性」、「短大・高専」の部分を見て、年齢が「25歳から29歳」、勤続年数が「5年から9年」を探すと、所定内給与が218千円、特別給与が783千円となっています。所定内給与を12倍して特別給与を足した額を、とりあえず年収と考えることにします。すると、この条件に当てはまる女性の年収は340万4千円となります。同じようにして計算していくと、こんな風になります。

25歳から29歳 勤続5年から9年  年収340.4万円 5年間で1,702万円

30歳から34歳 勤続10年から14年  年収395.7万円 5年間で1,978.5万円

35歳から39歳 勤続15年から19年  年収474.7万円 5年間で2,373.5万円

40歳から44歳 勤続20年から24年  年収558.5万円 5年間で2,792.5万円

45歳から49歳 勤続25年から29年  年収619.6万円 5年間で3,098万円

長い間同じ会社で勤め続けた場合、25年間の総収入は1億1,944万円になります。

もし、25歳から29歳の間、勤めず、30歳から49歳まで、パートで年収103万円で働いたとすると、総収入は103万円かける20年で、2,060万円です。

この二つの働き方の間の25年分の収入の差は、9,278万円になります。

もし50歳から59歳までの年収が、45歳から49歳の時の年収と同じであれば、フルタイムの場合の35年間の総収入は1億8,140万円です。パートが35年間103万円で働くと総収入は、3,605万円です。両者の差は1億4,535万円です。

実際にはフルタイムの方が勤め続けると年収はさらにあがります。パートの年収は変わりませんから、差は1億8,000万円ぐらいになって不思議ではありません。計算はあっています。

でも、この差を「子供を産むことのコスト、逸失利益」と考えていいのでしょうか。そうは思えません。

その理由は次回に。

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