雇用保護 その7

さて、有期契約の問題です。

有期契約を反復更新していた場合には、最高裁が一定の場合の雇い止め(更新拒否)について、解雇に関する法理を類推適用すべきだとしています。

企業側から見た場合、有期契約の利点は、労働者を一定期間拘束できることと契約期間終了後理由の有無、是非を問わず雇用を終了することができることです。

実は、企業は前者にはあまり重きを置いていないのではないかと思います。どうしても辞めたいと思っている労働者を、契約を盾にとって拘束してみてもあまりいい結果を生まないからです。

これに対して、雇用調整などを考えた場合には後者は重要です。

最高裁判例は、ここを拘束するので、企業にとっては問題があります。

それに加えて4条件の不明確さというややこしい問題も発生するのも、企業にとっては困ることでしょう。

また、企業が、反復更新を避けるために雇い入れ回数を制限するとなれば、労働者にとっても問題です。

もし、整理解雇の法理を有期契約労働者にも、完全に準用するとなれば、さらに問題は大きくなります。

であれば、こういう無期の契約を結んではどうでしょうか。

1 企業は、契約の開始から12ヶ月後に、労働者を解雇できる。

2 解雇しなかったとき、さらに12ヶ月経った時点でも解雇できる。

3 解雇するときは30日前に通知する。通知しなかったときは企業は解雇する権利を失う。

4 解雇するときは、一定の金額を支払う(賃金の○ヶ月分という決め方でもいいでしょう。)。(退職金とは別です。)

5 この金額は、勤続年数が変わっても変わらない。

この契約だと、通常の無期契約とは異なり、企業が制限付きですが解雇というオプションを持ちます。そのオプションを持つことそのものには、オプション料を払うわけではありませんが、そのオプションの行使には対価を払うということです。企業によっては、自由な解雇のためならある程度の支払いは応じていいというところがあると思いますが、いかがでしょうか。労働者も解雇されるときには、ある程度の補償を得られるのですから、受け入れられないことはないのではないでしょうか。この金額が安ければ解雇され易いと予め予想がつきますから、予想外の解雇という事態は避けられるはずです。

問題は、労働市場で労働者の立場が弱いとき、このオプション行使料が安すぎるという事態が発生しやすいことです。その時は賃金自体も低すぎるというもっと基本的な問題が発生しているおそれが多分にありますが。

何か、公正な基準を作る方法はないでしょうか。

以上で、「雇用保護 その2」にいただいたhamachanさんのコメントにもある程度お答えできたと思います。

雇用保護の問題は重要ですし、今行われている労働契約法制の議論の中でも、大きなポイントです。機会があれば、また、書いてみたいと考えています。

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