非正規労働者の育成

日本経済新聞が12月17日の社説、「政府の役割は賃上げできる環境づくりだ」で次のように主張しています。 非正規で働く人の賃金増も課題だ。本人が技能を高め、生産性を上げることが前提になる。職業訓練の充実など能力開発支援はますます大事だ。正社員、非正規社員を問わず、賃金を継続的に上げられる環境づくりにこそ政府は多面的に取り組んでもらいたい。 「能力開発支援はますます大事だ。」というのは間違っていません。でも、考えなければならないことがまだあります。これだけでは不十分でしょう。 「若い正社員の育成」で紹介した「若年者雇用実態調査」を見ても、正社員として採用したのではない若者に対しては、多くの企業は、長期的な観点からの育成はしていません(しているのは2割以下)。 当然、本人が能力開発に努力して、それを政府が支援するという道しかないのですが、この道を行くにはいくつか大きな障害があります。 まず、非正規労働者の中でも賃金が低く、生活を維持するためには長時間働かなければならない人が最もく能力開発を必要としています。しかし、賃金が低く、長時間働かなければならないということは、能力開発のために割ける時間も資金もないことを意味しています。政府は訓練を充実するだけではなく、訓練を受けるための費用、訓練を受けている間の生活を支えるお金も給付しなければなりません。 その財源をどこに求めるのか?これが難問です。また、自力で訓練を受けるのではなく、国に頼るとなったとき、日経新聞はこれを支持するのでしょうか? 次に、訓練を受けるべき施設が不足しているという実態があります。民間で職業訓練をしているところはありますが、質と訓練の内容の幅、数が不足しています。企業内訓練が充実していた反面、企業外の施設は手薄になってしまっているのです。おそらく、施設に訓練を受けた若者が就職に成功したら報酬を払うというような条件を付けたら、まず、訓練の提供を拒むでしょう。現実の訓練と就職はそれほど密接には結び付いていないのです。最近は大学に職業訓練機関化することを求める声もあるようですが、果たしてうまくいくのでしょうか? 人気blogランキングでは「社会科学」の21位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング