日経「人手不足経済」下

日経「人手不足経済」中」の次、最終回は「泥縄式の外国人活用」です。まあ、人手不足に対する定番とも言えそうな記事の内容です。 外国人技能実習生の話と介護士の話。介護施設高齢者と直接接触する介護士が言葉が分からなくていいのか、コミュニケーションは「介護の本質と無関係」なのか?という疑問がわきます。経営者には取材していますが、一緒に働いている日本人介護士、介護されている方の話は聞いていないのでしょうか。 女性の就業促進のための育児支援業の外国人受け入れの話。 「育児や介護のために働きたくても働けない女性は全国で220万人。フェルドマンは、『女性の重荷を減らさずに就業促進は可能か。外国人を入れるかではなく、いかに摩擦無く受け入れるか議論する段階に来ているのに」と嘆く。」 育児支援業というのが一体なんなのかよくわからないのですが、家庭で働くベビーシッターでしょうか? 素直に考えると220万人の女性が働けるようにするために、何人の外国人労働者が必要なのでしょうか?もし1対1なら220万人です。2対1で110万人。彼女、彼らは出身国ではなく、日本で生活するのです。そして、帰国するまでに貯金をするか、家族に送金をするのが目的でしょう。アパートを借りて、食費、衣服、水道光熱費、通信費、交通費などを賄うのに、大卒の初任給として20万円ぐらい、貯金が5万円とすれば25万円です。ベビーシッターの賃金がある程度の生活をできるぐらいでないと問題が起こる確率が高まります。女性二人の給料からこの費用を出せるのでしょうか?出した後の手取りはいくら残るのでしょう? 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、年齢別にみて、日本の女性の中で賃金が一番高い45歳から49歳で、月々の給与が27万円にすぎません。同じ「賃金構造基本統計調査」で役職別にみると、係長級が34万円、課長級が44万円です。 この中から、賃金を払えるのでしょうか? ひとつ記者の方々、デスクに考えていただきたい問題があります。賃金の安い外国人労働者がいくらでも来てくれる時代はどれぐらい続くのでしょうか?途上国の所得もだんだん上がってきます。日本がいい出稼ぎ地である時代が、ずっと続くというのは幻想ではないでしょうか?もし介護や育児を外国人労働者に依存してしまって、来る人がいなくなったらどうするのでしょう?首都圏直下型地震でもあって外国人労働者が一斉に帰国してしまったらどうするのでしょう?介護施設で人がいなくなったら、高齢者の中から死者が出かねません。 少し偏見があるのかもしれませんが、この3回のシリーズを読むと、取材された方々、デスクの自然に価格メカニズムを働かせることに対する抵抗感といったものを感じます。人手不足になれば賃金は上がる、人手不足の産業が人手を確保するためには、他の産業に比べてこれまでより賃金を高くしなければならない、といった常識が働いていないような気がするのです。 低賃金で重労働の仕事にいくらでも人が集まる国に住んで、日本人は幸せになれるのでしょうか?そういう国で働く日本人は幸せでしょうか? 必要なのは「意欲ある外国人がきちんと働けるような新しい枠組み」ではなく、人手不足に陥っている職場で意欲ある日本人がきちんと処遇されて働けるような新し枠組みではないでしょうか? 人気blogランキングでは「社会科学」の18位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング