就業率から考える

「雇用と賃金を考える(2013年10月)」 パートタイム労働者」で「労働市場のタイト化は着実に進んでいると見るべきでしょう。」と書きました。あとどれぐらいタイト化が進めば、労働市場の空気が大きく変わるのでしょうか?

労働市場のタイト化の有力な指標の一つが総務省の労働力統計に基づく、就業率(=就業者÷人口)でしょう。就業率には年齢差、男女差がありますが、とりあえず、生産年齢人口(15歳から64歳)の男女計の動きから検討を始めましょう。2013年は11月までしか発表されていないので、とりあえず、2012年12月から2013年11月までの平均を2013年と仮定して話を進めます。

2013年の就業率は71.5%です。2002年以降2012年までの最高はリーマンショックのあった2008年の70.8%でした。2012年までこの水準を超えられなかったのですが、2013年にはこれを大幅に上回りました。年齢別にみても、進学率の影響のある15歳から24歳を除いて2008年の水準を上回っています。この点に限ればリーマンショックの悪影響は克服されたといえるでしょう。

しかし、男女別にみると少し違いがあることが見えてきます。

男性では、この年齢の2013年の就業率は、80.7%で2007年の81.7%を1%ポイント下回っている。年齢別にみても60歳から64歳を除いて2007年の水準を下回っています。試みに15歳から59歳までの就業率が2007年の水準まで上がったとすると、就業者は2013年より54万人ほど増えることになります。男性の労働力供給には、なお、これぐらいの余裕があるとみていいでしょう。なお、このうち17万人は15歳から24歳なので、進学率の影響を見ておく必要があるでしょう。男性への需要を50万人から60万人ぐらい増やせば、はっきりとタイト化したという感じが出てくるものと思われます。

女性については、2013年の就業率は62.2%で、おそらく1980年代以降の過去最高でしょう。リーマンショックは、マイナスではなくプラスに働いています。年齢階級別にみても15歳から24歳を除けば順調に(?)上昇してきていて、男性に近づいてきています。いったいどこまで上がるの見当がつきませんが、仮に2013年の男性の就業率まで上昇すれば、生産年齢人口で700万人以上増えます。そこまで就業率を上げるためには、相当賃金が上昇しなければならないと思います。

しばらくは、男性の就業率の数字に注目していけばいいのだろうと考えています。

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