相対的貧困率
「等価可処分所得」では、6世帯、15人の等価可処分所得を計算しました。
この15人を等価可処分所得の高い順に並べてみると、こうなります。
1 山田さんのご主人
2 山田さんの奥さん
3 山田さんのおばあちゃん
4 山田さんのお子さん 等価可処分所得は全員300万円です。
5 田中のご主人
6 田中さんの奥さん 等価可処分所得は全員270万円です。
7 中村さん 等価可処分所得は220万円です。
8 佐藤さんのご主人
9 佐藤さんの奥さん
10 佐藤さんの御宅の小さなお子さん 三人とも等価可処分所得は210万円です。
11 鈴木さんのご主人
12 鈴木さんの奥さん
13 鈴木さんのところの中学生のお子さん
14 鈴木さんのところの小学生のお子さん 等価可処分所得は200万円です。
15 高橋さんのおばあちゃん。 等価可処分所得は80万円です。
等価可処分所得は世帯単位で考えますから、同じ世帯ならみんな等価可処分所得は同じです。
さて、この15人のうち、ちょうど真ん中、8番目の佐藤さんのご主人の等価可処分所得を、等価可処分所得の中央値と言います。この15人の等価可処分所得の中央値は210万円です。
等価可処分所得の分布の真ん中という意味です。等価可処分所得の平均値ではありませんので注意が必要です。
等価可処分所得中央値の半分の額、この例では210万円÷2=105万円を貧困線と言います。
全体の人数のうち等価可処分所得が貧困線に満たない人の割合が相対的貧困率です。この例では、貧困線105万円に足りないのは高橋さんのおばあちゃん一人だけです。ですから相対的貧困率は1人÷15人≒6.7%です。
二つ注意が必要です。まず、高橋さんのお爺さんが遺産をどっさり残してなくなっていて、おばあちゃんがそれを取り崩して、ゆとりのある生活を送っていても、この計算には変化がありません。資産の多寡はこの計算では無視されています。
もうひとつ、鈴木さんの例をこんな風に変えてみましょう。
大学生と高校生中学生と小学生のお子さんのいる鈴木さんご夫婦。ご主人はフルタイムですが、奥さんは教育費のことも考えてパートです。夫婦の可処分所得は600万円400万円。一人当たり可処分所得は150万円100万円。等価可処分所得は300万円200万円。
そして山田さんと比較してみましょう。
4人家族の山田さん。ご夫婦のほかにおばあちゃんと子どもがいます。おばあちゃんが孫の面倒を見てくれるので、奥さんもフルタイムで働いています。夫婦の可処分所得は600万円。一人当たり可処分所得は、150万円。等価可処分所得は300万円です。
可処分所得も世帯人員も同じですから、一人当たり可処分所得も、等価可処分所得も同じです。では生活のゆとり、あるいは苦しさはどうでしょうか?
鈴木さんの御宅では、学費が大変でしょうし、子どもたちの食費も相当かかるでしょう。男の子だったらなおさらです。女の子だったら服代がかかるでしょう。多分、山田さんのお宅よりゆとりがないはずです。
等価可処分所得は、家族の人数だけを考えていて、質は無視しているのです。相対的貧困率は、等価可処分所得を基に計算していますから、やはり質は無視されています。有益な指標ですが、完全な指標ではありません。それ一つで貧困を表せる完全な指標はおそらくないでしょう。
参考になるブログを二つ紹介しておきます。
「相対的貧困率は出発点にすぎない」
「相対的貧困率」
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