等価可処分所得

相対的貧困率を理解するためには、等価可処分所得という考え方を知っておく必要があります。 可処分所得ってなんだろうと思われる方は「可処分所得と消費支出」に詳しい説明があります。 ポイントだけにすると、収入から強制的に取られる分税金や社会保険料を差し引いた自由に使える所得です。 さて、ここでは可処分所得は世帯合計で計算します。 貧富の差を考えるとき、あるいは生活のゆとりの程度を考えるとき、厄介なのは同じ所得でも世帯員数が違うと生活に差が出ることです。一人暮らしで800万円なら、十分ゆとりのある生活でしょう。でも、8人家族なら苦しいでしょう。世帯の規模を調整するのに一番簡単な方法は可処分所得を世帯の人数で割って、一人当たり可処分所得を計算するという方法です。でも、この方法にも欠点があります。年150万円の一人暮らしと、年300万円の二人の暮らしで、どちらが楽でしょうか。一人当たりにすればどちらも150万円ですが、家具や洗濯機、テレビ、電気製品、風呂、トイレなどは二人で使うことができます。二つはいりません。二人のほうが生活が楽でしょう。 世帯の合計だけでは世帯の人数の差を調整できませんし、一人当たりに直すと調整しすぎです。どうすればいいでしょうか?少し、理論的に考えてみます。世帯の可処分所得をY、世帯の人数をNとしましょう。 可処分所得を世帯の人数で割るというのは、どういうことになるでしょうか? Y=Y÷Nです。ここで、「2分の1乗」を思い出してください。Nの1乗=Nでした。 するとY=Y÷N=Y÷(Nの1乗) YをNの1乗で割るというのは世帯の可処分所得を、調整するのに世帯の人数Nを100%(=1)カウントするということです。 同じように可処分所得を世帯の人数で割らないというのはこんな意味になります。 Y=Y÷1です。ここで、もう一度「2分の1乗」を思い出してください。Nの0乗=1でした。 するとY=Y÷1=Y÷(Nの0乗)です。 Nの0乗で割るというのは、世帯の可処分所得を調整するのに、世帯の人数Nを全くカウントしない(0=0%)ということです。 世帯の人数を100%考慮すると(Nの1乗で割ると)割りすぎでした。世帯の人数を全然考慮しないと(Nの0乗で割ると)調整がなされません。どうすればいいかと考えて出されたのがこういうアイディアです。 1では調整しすぎ、0では調整不足なら、中間2分の1で調整しよう。 つまりNの2分の1乗で割ろう。 ここで、またしても「2分の1乗」を思い出してください。 Nの2分の1乗とはNの平方根のことでした。 要するに世帯合計の可処分所得を世帯の人数の平方根で割ることにするのです。これが、等価可処分所得です。 いくつか例をあげてみましょう。 4人家族の山田さん。ご夫婦のほかにおばあちゃんと子どもがいます。おばあちゃんが孫の面倒を見てくれるので、奥さんもフルタイムで働いています。夫婦の可処分所得は600万円。一人当たり可処分所得は、150万円。等価可処分所得は300万円です。 夫婦二人暮らしの田中さん。奥さんは結婚してフルタイムの仕事を辞めましたが、まだ子どもがいないのでパートに出ています。夫婦の可処分所得は382万円。一人当たり可処分所得は、191万円。等価可処分所得は270万円です。 学校を出たばかりで一人暮らしをしている中村さん。正社員の口があったので可処分所得は220万円です。一人当たり所得も、等価可処分所得も220万円です。 小さな子供が一人いる佐藤さんご夫婦。ご主人はフルタイムですが、子どもに手がかかるので奥さんは専業主婦です。ご主人の給料だけなので可処分所得は364万円。一人当たり可処分所得は121万円。等価可処分所得は210万円。 中学生と小学生のお子さんのいる鈴木さんご夫婦。ご主人はフルタイムですが、奥さんは教育費のことも考えてパートです。夫婦の可処分所得は400万円。一人当たり可処分所得は100万円。等価可処分所得は200万円。 年金暮らしの高橋さんのおばあちゃん。旦那さんに先立たれて年金と貯金の取り崩しで生活しています。可処分所得は80万円。(貯金の取り崩しは可処分所得ではありません。)一人当たり所得も80万円。等価可処分所得も80万円です。 いかがでしょう?等価可処分所得の高いほうから低いほうに順番に並べたのですが、感じがつかめたでしょうか?等価可処分所得で考えるというのはみなさんの生活の感覚に合うでしょうか? 次回はいよいよ最終回、相対的貧困率を説明する予定です。 ここをクリック、お願いします。 人気blogランキング 人気blogランキングでは「社会科学」では35位でした。