3ヶ月後の「あまりにもアニマルなアメリカ商業銀行」

あまりにもアニマルなアメリカ商業銀行」で書いたアメリカの商業銀行の「アニマル・スピリット」に満ちた「レバレッジ経営」も、1-3月の循環表を見ると、修正されつつあるようです。

投資銀行が商業銀行に転換している影響もありますので、読み方に注意が必要ですが。

(注)ここで商業銀行というのは、U.S.-Chartered Commercial Banksのことです。

アメリカの資金循環表を見て、金融資産のほうが負債より少ないので、びっくり仰天していたのですが、今回はマイナス幅が小さくなってきています。

2004年末         マイナス5,264億ドル

2005年末         マイナス5,188億ドル

2006年末         マイナス5,487億ドル

2007年末         マイナス6,375億ドル

2008年第1四半期末  マイナス5,555億ドル

2008年第2四半期末  マイナス5,419億ドル

2008年第3四半期末  マイナス3,838億ドル

2008年末         マイナス1,787億ドル

2009年第1四半期末  マイナス1,234億ドル(553億ドル改善)

ただし、負債のうちに親会社である銀行持ち株会社(bank holding companies)の出資(investment)、1兆2,457億ドルが含まれています。これを負債から差し引くと、プラス1兆1,223億ドルです。

この出資は年末は1兆1,813億ドルでしたから590億ドルの増加です。これを考えると改善幅は、1,143億ドルです。

なお、銀行持ち株会社が、この出資の原資をどこから得たのかというと、負債であるCoporate bondsの増加4,071億ドルからでしょう。こちらのほうが多いのですが、同時に銀行ではない子会社への出資も、5,811億ドル増やしています。

公的資本投入の効果も出ているのでしょうし、商業銀行も、同時に資産も圧縮(1,764億ドル)しています。負債の減少は、2,551億ドルです。

資産の中では、Bank loans n.e.c.が1兆6,768億ドルから1兆5,809億ドルに899億ドル減っているのが最大です。

健全性の回復という点では、国債(Treasury securities)残高が、161憶ドル増加し、逆に不動産担保の債権を証券化した債券(Agency-and Government-Sponsored-Enterprises-backed securities)を、167億ドル減らしているのが目につきます。リスク回避という点では評価できるでしょう。不動産などを担保とする貸し出し(Mortgages)は119億ドル増えていますが、消費者信用(Consumer credit)、証券信用(Security credit)は、それぞれ280億ドル、195億ドル減っています。負債の面では、外国銀行からの借り入れも、455億ドル減っています。

2009年3月末の負債、9兆6,367憶ドル(年末9兆8,544億ドル)のうち急に返済が求められそうなのは、ネットで見た銀行からの借入、7,330億ドル(年末8,857億ドル)と、普通、当座預金、6,388憶ドル(年末7,009億ドル)だけです。現金やFRBへの預け入れが5,948憶ドル(年末6,563億ドル)ありますし、いざとなればFRBが貸してくれるはずです。

健全性は回復しつつあると言っていいでしょう。

さて、前回書いた金融資産の変化です。

Treasury securities              695憶ドル(     534憶ドル)        

Agency-and GSE-backed securities 1兆0,854億ドル(1兆0,687億ドル)

Corporate and foreign bonds         5,730億ドル(  5,420億ドル)

Bank loans n.e.c.              1兆5,809億ドル(1兆6,708億ドル)

Mortgages                  3兆7,666億ドル(3兆7,547億ドル) 

Consumer credit                8,506億ドル(  8,786億ドル)

小計                     7兆9,260億ドル(7兆9,682億ドル)

資産合計                  9兆5,133憶ドル(9兆6,897憶ドル)

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