ミステリアスな Other

アメリカの資金循環表を読んでいると、興味が尽きません。「3ヶ月後の「あまりにもアニマルなアメリカ商業銀行」」に続いて、今回は Rest of world 直訳すると世界の残り。アメリカ以外の主体であって、アメリカと関係を持っているもので構成される部門です。アメリカの銀行に口座を持ってられる方は、この一員です。

ややこしいのですが、この部門が持つ資産はアメリカの負債、この部門の負債はアメリカの資産です。

まず、資産(=アメリカの負債)の総額です。2008年末の16兆7,636億ドルから281億ドル増えて、16兆8,017億ドルです。ほとんど変化がありません。でも、中身が変わっています。

例の不動産担保の債券を証券化したもの(Agency-and Government-Sponsored-Enterprises-backed securities)は、1兆4,073億ドルから795億ドル減って、1兆3,278億ドルです。5%位の減少です。どうも外国の公的機関(official)(含む通貨当局)が大量に持っていたのを減らしているようで、9,479億ドルから9,244億ドルに減っています。私的部門も4,594億ドルから4,034億ドルへ減らしています。「国債と同じようなものと考えていたのにぃ」というところでしょうか。企業の社債もわずかですが減っています。2兆8,84億ドルから、82億ドル減って2兆8,002億ドル。

これらを減らした分をアメリカの外に持ち出して、アメリカの債券と縁を切ったかというとそうではないのですね。国債(Treasury securities)が増えています。全体では1,590億ドル増加です。残高は3兆1,820億ドルから3兆3,410億ドルに。このうちが2兆1396億ドルから、22,593億ドルへ、1,197億ドル増えています。

実際、世界でもっとも流動性が高い市場があり、決済に使える通貨にすぐ換金できる債券といえばアメリカ国債しかありません。準備通貨としてのドルの地位に揺らぎはありません。

BRICsなどと言ってみても、ルーブルや元など問題外です。サムライ債を踏み倒したブラジルのレアル(だったでしょうか?変わりすぎて覚えてられません。通貨の名前がどんどん変わる国の通貨などは国際通貨にはなれません。)

ユーロもユーロ建ての各国国債はありますが、発行主体がばらばらでは、運用が面倒です。

中国がアメリカを脅かしてみても、無理でしょう。アメリカへの輸出で稼いでいる国が、アメリカの通貨を崩壊させ、経済をおかしくさせるわけにはいかないのです。少額借りれば奴隷ですが、これだけ借りてしまえばご主人様です。

ただし、アメリカの大手銀行が健全である限りは、という条件がつきます。

本筋に戻って、もう一つ減っているのがアメリカの株です。1兆8078億ドルから1兆5,951億ドルへ、2,127億ドルの減少です。

一方、増えているのがアメリカへの直接投資。2兆7,481億ドルから666億ドル増えています。ただ、これはコストで計算しています。時価がどうなっているかは神のみぞ知るでしょう。

そして最大の増加を示しているのが。Other。3,556億ドルも増えています。これは一体何でしょうね。

統計を作るとどうしても誤差が出ます。誤差はえいやっとその他に放り込んでしまいがちなのですが・・・。

実は負債(=アメリカの資産です。)でもOtherで3,192億ドルも減っています。

この二つを合わせると世界の残りの純資産が6,748億ドルも増えているのですが、中身が分かりません。

ミステリアス Other。

世界の残りの純金融資産は5,134億ドル増えています。アメリカ側からみると純金融負債が増えているわけで、これは今後のアメリカの所得収支に、ボディーブローのように効いてくるでしょう。

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