人口推計は、「基礎年金と
国民年金 その5」で取り上げた
公的年金の給付や負担に影響するため、非常に注目を集めます。
人口推計は数年間の間隔で行われ、最新のものは平成18年に作られました。新しいものが出ると、前のもののことは忘れ去られてしまうのが世の常です。現在平成14年推計が議論されることはほとんどありません。
しかし、人口推計は普通の経済予測に比べるとはるかに長い期間を対象とします。最低でも50年です。その推計が正しかったか、間違っていたか、間違っていたとするならどう間違っていたかは、やはり長期の実績と比べて判断する必要があるでしょう。
学習院大学の鈴木亘准教授が「社人研が過去5年ごとに常に予測をはずし、評判を悪くしているというのは、この出生数(
出生率)に限ってのことなのです。」(『だまされないための年金・医療・介護入門』p.13)と書かれているように、一番難しいのは
出生率の推定です。そこで
合計特殊出生率について、推定値と実績の比較をしてみましょう。
平成14年推計は平成12年は実績をとり、13年から推計を行っています。実績が発表されているのは19年までなので、7年間について検討します。検討するのは中位推計です。
さて、判断の基準として次の二つをとります。
1 期間中の
合計特殊出生率の平均値の差
将来人口の推計では、1年ごとの数字はあまり大きな意味を持ちません。1年目が1.30、2年目が1.31であっても、1年目が1.31、2年目が1.30であっても将来人口にはあまり差が出ません。しかし、平均値が狂うと差が出てきます。
2 期間中の
合計特殊出生率の動きの型
合計特殊出生率が上がっていくのか、下がっていくのか、あるいは一時下がって、その後反転上昇するのかは、その期間を越えた後の
合計特殊出生率に影響し、それによって将来人口の予想は大きく変わってきます。
推定値と実績は次の通りです。
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Mokuji/1_Japan/J_Detail_14.asp?fname=1_katei/1-1.htm
合計特殊出生率 年 中位推計 実績年 | 予想 | 実績 |
---|
平成12年 | 1.35918 | 1.35918 |
平成13年 | 1.34277 | 1.33 |
平成14年 | 1.33240 | 1.32 |
平成15年 | 1.32344 | 1.29 |
平成16年 | 1.31686 | 1.29 |
平成17年 | 1.31686 | 1.26 |
平成18年 | 1.30696 | 1.32 |
平成19年 | 1.30622 | 1.34 |
平成20年 | 1.30816 | - |
第1の基準に照らせば、推定値の平均は1.31992、実績は1.30714です。差は0.01277、率では0.97%です。大きくはずれたと言えないでしょう。
第2の基準で考えると、推計は19年まで低下し、その後上昇するとしていました。現実には、17年まで低下し、その後上昇しています。底になる年を実績より2年遅く想定してしまいましたが、ごく短い期間は低下、その後反転という方はきちんと捉えています。
総合的に見れば、14年推計は今のところ良好なものであったというのが、私の評価です。はじめのうちは外れても徐々にあってくるというのは、これはひょっとすると大器晩成型かもしれません。
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