障害者と年金

「高齢期はエッフェル塔で」について」のコメント欄で、お約束したとおり障害者年金について調べてみました。

年金は国民年金の場合、厚生年金の場合、共済年金の場合と分かれているのですが、基本は同じです。一番単純な国民年金で考えてみます。

20歳以上(成人)になると、国民年金に加入する義務が発生し、加入手続きを済ませて、保険料を払っていると、障害者になったとき障害年金を受けることができます。金額は基本的には定額制です。また、所得制限はありません。

これは、保険料を払って、保険事故が発生したときに給付を受けるというものですから、社会保険の原理から見て、ごく自然なことです。

しかし、障害を負うのは20歳になってからと決まっているわけではありません。もし、20歳(成人)になる前に障害を負っていたらどうなるか。その子が20歳(成人)になるまでは、その人を育てている家庭に特別児童扶養手当が支払われます。これで障害により特別に必要となる費用を給付するのです。これも定額制です。これは社会保険ではありません。社会手当と呼ばれる社会福祉の一環で、費用は税金でまかなわれます。

では、その子が20歳(成人)になったらどうするのか。やり方としては、理論的には二つの方向があります。20歳以後に障害者になった片と同じように年金制度、社会保険に似た仕組みで対応するか、あるいは、特別児童扶養手当の延長で、社会福祉の一環である制度を作るかです。

実際には、年金路線が選ばれており、国民年金から障害年金が支払われます。ただ、保険料を負担していないので、所得制限があります。費用負担は国が五分の3を見ています。この年金の受給者には保険料の支払い義務がありませんから、この場合に限ればhamachanさんの言われるように「本人が全く拠出していなくても、フルペンションがもらえる仕組み」です。社会保険から見れば特別の扱いです。これによって、20歳以前に障害を負った方と20歳以後に障害を負った方への給付は同じになります。

もし、特別児童手当の延長線で考えるとこのバランスが危うくなります。まあ、そろえようと思えばそろえられますので、本質的ではないかもしれません。実務的な意味は大きいと思いますが。

ただこの路線をとる以上、、20歳以上(成人)以上で障害を負った方には、年金保険への加入、年金の支払いで対応するという社会保険の原理が貫かれていますから、額が固定されるのはやむを得ず、それ以前に障害を負った方にもそれと同じように給付すると言うことであれば、これも額が固定されるのはやむをえないでしょう。

もし、hamachanのおっしゃるとおり特別扱いの部分について、「本人が全く拠出していなくても、フルペンションがもらえる仕組みであるわけですから、機能的には目的税によるシステムと選ぶところはない」として、生活の必要に応じた弾力的な給付を行い、定額制を止めるのであれば、給付のバランス上、原則どおりの障害者年金も定額制を止めねばならず、社会保険にはしにくくなります。

そのようにして、障害者が生活保護を受けなくても生きていけるように、給付は弾力的にしてその費用は税金で見るというシステムを採用するということであれば、それはむしろ障害者専用の生活保護となってしまうように思えます。

割り切ってしまえば、それも一方ではありましょうが、もしその場合高齢者に対する年金も同じにするのでなければ、一種のスティグマ(焼印)が押されてしまうような気がします。また、障害者に対する過度な優遇として批判を受ける可能性もないとは言えません。一般的な保険の枠組みの中での給付のほうが、この点ではいいと思います。

そして、現在のシステムで受けられる年金で生きていけない、他に手段もないと言うことであれば、生活保護を受けられます。こう考えると、今の仕組みが「それは制度設計がおかしい」とはならないと思うのです。

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