数値目標 その2

数値目標 その1」の続きです。

現行制度を前提とすると、単純に全体の納付率を社会保険庁への数値目標とする替わりに、こうしたら良かったのではないでしょうか?

1 免除の対象とならない中高所得層について納付率を目標とする。

  式で示すとこうなります。

  目標1=中高所得層の納付者÷中高所得層の人数

2 免除の対象となる低所得層については二つの目標を作ります。一つ目はもちろん納付者数を低所得層の人数で割ったもの。もう一つはきちんと申請をして免除した人数を低所得者の人数で割ったもの。

  目標2=低所得層の納付者数÷低所得層の人数

  目標3=申請して免除を受けた人数÷低所得層の人数

次ぎに進む前に、予め目標が妥当であるかどうかを検討しておきましょう。目標1、目標2は、異論のないところでしょう。問題は、目標3です。私がこれを目標と認めたのは、これにより無年金者の発生を防げるという理由からです。法制度に詳しくない方が、よく分からないまま、手続きをせずに無年金者になってしまうのはよくありません。それを防ぐには、やはり社会保険庁職員の努力が必要です。その努力をしたばあいは評価し、怠った場合は厳しく見るために目標を設定すべきだと思います。(注)

なお、目標の数が3つに増えたからといって、評価がそれほど複雑になるわけではありません。

以下、私が考える長所です。

1 免除者を増やすだけでは、目標1,2を達成できません。この目標を作ることにより、納付者数を増やすという方向に職員は動きます。これが、本来国民が望んでいたことのはずです。

単純な納付率だと免除者を増やすことに努力が集中する可能性がありますが、こうすればそのおそれはなくなります。

2 三つの目標の達成度を示すことにより、国民に実態がわかりやすくなります。

3 地域間のばらつきを修正し、より公平な評価ができます。社会保険事務所毎に、中高所得者低所得者の割合は違うはずです。今のやり方だと、失業者が多い地域はどうしても納付率は低くなるでしょう。そうすると、各事務所の職員の努力とは別の理由で納付率に差がでます。一本の納付率では、評価の基準としては、公平性という面でも、努力を適切に反映しないという意味でも問題があります。 

 3つの目標にすれば、それを各々の事務所間で比較すればいいのですから、所得分布の違いはかなり除去できます。この方が公平ですし、勤怠の程度が明確になります。職員も納得しやすいでしょう。

4 景気の変動によって、中高所得者低所得者の割合は変わってきます。中高所得層が増えることによって納付率が上がるのは、社会保険庁の成果とは言えません。逆に、低所得層がえたことによって納付率が下がったとき、社会保険庁の責任を問うのは酷です。社会保険庁には景気をコントロールする力はないのですから。

 3つの目標を作れば、社会保険庁自身の努力の程度をよく反映できます。

 なお、政府の目標を納付率にするのは構わないと思います。景気をよくするのは経済官庁の担当、与えられた景気の状況の下で納付率を上げるのは社会保険庁の担当とすればいいのですから。

 私は、数値目標に反対ではありません。目標を示して、その達成に向かって努力する、努力すれば評価するというシステムには、原理的な問題はありません。

 ただ、それを使って政府、あるいは公務員をコントロールしようとするなら、努力を的確に反映する数値目標を設定しなければなりません。今回の問題は、中高所得層と低所得層で制度的な差があるのに、それを一本にして単純すぎる目標を設定したことにあるように思えます。

(注) 現行制度を変えていいなら、こうすればいいような気がします。

低所得層は、法律の規定で免除にします。免除の申請、承認は不要とします。もちろん納付したい、納付できる方は納付して構いません。

 こうすると、まず、手続きがよく分からないために無年金者になることはなくなります。第二に、社会保険庁の事務負担が減り、窓口が空いたり、免除手続きにあたっていた職員を納付率向上のために使うことができます。費用も減ります。この場合には目標3は不要です。

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