ちょっと微妙な日経新聞

日経新聞で、「財政 キーワードで読む」という連載をしています。今日2006年5月6日はその5回目で「道州制」を取り上げています。

ちょっと気になる表現が。

「ただ、米国のように州政府に司法権立法権を認めた連邦制とは異なるので、地方分権がどこまで進むか疑問視する声がある。」

本筋はわかるのですが、「認めた」って、誰が認めたと言おうとしているのでしょう。日本だと、国が認めるのでしょうから、米国では「連邦」が「州」に認めているというように読めます。

もし、そういう意図で書いているなら、再考を要します。米国の場合、もともと州があって、完全な主権を持っているという建前でした。これらの州が連邦を結成し、連邦に一定の権限を認めたのです。州と訳されているのは、総称ではSTATE、個々のSTATEの正式名称はSTATEまたはCOMMONWEALTHなどです。ロードアイランド州の正式名称はRhode Island and Providence Plantationsだそうです。STATEやCOMMONWEALTHを普通に訳せば、「国」、「共和国」です。

実際、イギリスから独立してから連邦結成までの間は13州は「連合(Confederation)」は結成していましたが、独立国でした。

合衆国憲法で連邦に「認められた」権限以外は州なり国民が持っているのです。憲法の発効、つまり連邦の成立のためには、独立13州のうち9州の承認が必要でしたし、承認した州だけで有効でした(憲法第7条)。これはいくつかの独立国が条約(多国間条約です。)を結ぶ際の方式です。

ついでですが、南北戦争の際南部諸州は連邦から「脱退」しようとしたのであって、「独立」しようとしたのではありません。これも、独立国が連邦を結成する、加入するというシステムを前提とすれば当然でしょう。

州の憲法を改正して連邦の権限のを拡大したければ、改正案を連邦を構成する州の4分の3以上が批准しなければなりません(憲法第5条)。

連邦は当初、個々人に土地から得られる収入を基礎として直接所得税を賦課し、徴収する権限を認められていませんでした。1913年に憲法を改正して初めてできるようになったのです。

このように米国では、地方が主権を持ち、その一部を連邦に委託しているのです。「地方分権」を行い、そのような権限を持つことを「認めた」結果、州が立法権司法権を持っているわけではありません。もともと持っているのです。

地方分権」という考え方は、むしろ廃藩置県によって国が都道府県を作って権限を与えた日本にふさわしいでしょう。

このような歴史の本質的な違いを踏まえて、道州制というものは検討されるべきでしょう。アメリカモデルを採用するのは無理があるような気がしています。

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