市場化テスト その2

市場化テスト その1」の続きです。

まず、採用から。

国家公務員であれば、平等取り扱い原則というものがあります(国家公務員法第27条)。国民を国家公務員法の適用(採用に関する規定も含まれます。)について、人種、信条、性別、社会的身分、門地、政治的意見、政治的所属関係によって差別してはいけないという原則です。例外はありますが、その例外も法律に定められています。

この原則は、採用についても適用されます。従って、日本国民に対する差別が行われることはありません。もし、採用を担当する職員が差別をすれば、1年以下の懲役または3万円以下の罰金です。懲役になれば執行猶予がついても自動的に失職します。また、罰金で済んでも懲戒処分は免れません。懲戒の相場がよく分からないのですが、場合によっては免職です。

委託先の企業の職員の採用については、性別を除き特段の制約はありません。もちろん、差別をした場合の刑罰もありません。性差別を行ったとしても刑罰はありません。懲戒処分をするかどうかは企業の自由です。様々な差別が起こる可能性があります。

また、国家公務員の採用は競争試験が原則です(国家公務員法第36条)。一次試験はペーパーテストです。先ほどの平等取り扱いの原則がありますから、年齢制限はありますが、日本国民なら、誰でも受験できます。委託先の企業の職員の採用については、縁故でも構いません。

国家公務員に対していろいろ批判はありますが、採用に関しては公務員制度は透明性、平等性という観点からは優れています。

フリーターや所謂ニート、不安定な雇用についていて、安定した職業に就きたいと希望している若い方にとっては、公務員試験は一つのルートなのですが、この枠が小さくなってしまうのは、経費節減のためやむを得ないとはいえ、いささか残念です。

逆に、国家公務員の方には欠格条項があります(国家公務員法第38条)。次のような方は国家公務員にはなれません。

1 禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者、または執行を受けることがなくなるまでの者・・・具体的には執行猶予中の方です。

2 国家公務員として懲戒免職の処分を受け1年以上を経過しない者

日本国憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、またはこれに加入した者

委託先企業の採用にはこのような制限はありません。従って、このような方が、委託された公務を遂行することができます。

また、国家公務員が、採用された後、これらに該当するようになれば当然に失職しますが(国家公務員法第76条)、委託先にはこのような制限はありません。

委託先企業の職員が犯罪を犯しても、執行猶予がつけば委託された公務に携われます。汚職をして職を失った国家公務員が委託先企業に採用されると言うことも起こり得ます。これまで、役所の窓口に犯罪を犯し、執行猶予中のものが座っているということはなかったのですが(これについては是非の議論はあると思います。)、これからはあり得ると言うことです。

日本国憲法を暴力により破壊しようとする政党が、事実上支配する会社を作り、競争入札に勝てば党員を採用して委託された公務を執行させることができます。制度としていいんでしょうか?

一方、これまで大きな議論になってきた外国人の問題が解決します。公権力を行使するポストに就けない外国人も委託先企業に採用されれば、そのようなポストに就けます。外国政府の公務員が委託先企業に採用されるということもあり得るでしょう。

(続く)

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