パートタイム労働者の賃金 その2

パートタイム労働者の賃金」について の続きです。一般労働者とパートタイム労働者の仕事の多様性の比較をします。 仕事といった場合に基本になるのは職種です。女性のパートタイム労働者の職種別の1時間あたり所定内給与、労働者数などはこちらです。 http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-rou4/data16/31601.xls これを見れば、確かにほとんどの職種にパートタイム労働者がいます。 前回引用した (3)「今やあらゆる業種や職種でパートは活用されており、仕事の難しさや必要とする緊張度、仕事のつらさなど実に様々である。」 は、確かにそのとおりです。 しかし、これから直ちに、一般労働者と同じように多様であるとは言い切れません。次のステップに進みましょう。 パートタイム労働者の代表的な職種を選び出しました。構成割合が1%以上の職種です。
女性パートタイム労働者の仕事
職種構成割合(%)所定内給与(円)占有率(%)
販売店員16.184177.3
給仕従事者5.986577.4
百貨店店員5.489879.8
スーパー店チェッカー3.683783.7
ビル清掃員3.487273.0
調理師見習2.683986.0
ホームヘルパー1.51,19771.0
娯楽接客員1.21,03243.8
調理師1.184439.6
福祉施設介護員1.094717.4
看護師1.01,5289.6
42.8
構成割合は、その職種に就いている女性パートタイム労働者が女性パートタイム労働者全体に占める割合です。 所定内給与は、1時間あたり所定内給与です。 占有率は、その職種に就いている女性労働者(一般+パートタイム)に占めるパートタイム労働者の割合です。 上位11職種だけで、女性パートタイム労働者の4割以上になっています。基本的には、小売り販売の職種、飲食店の職種、対人サービスの職種そして清掃の仕事です。 このような特定職種への集中は一般労働者のは見られません。この特定の少数職種への集中が女性パートタイム労働者の特徴なのです。 十分な表現をすればこうなります。 (3)「今やあらゆる業種や職種でパートは活用されており、仕事の難しさや必要とする緊張度、仕事のつらさなど実に様々である。しかし、ごく限られた職種に多くの女性パートタイム労働者が集中しており、一般労働者に比べて多様性に欠けている。」 したがって、パートタイム労働者の賃金が仕事に応じて決まっていれば、賃金の散らばりは一般労働者に比べて小さくなることが予想されます。つまり前回見たように賃金の散らばりが小さいことを論拠として、賃金が仕事に応じて決まっていないとは言えません。 次に、 (4)「にもかかわらず、パートの仕事として大括りにされ、賃金が低く抑えられているのが実状である。」 といえるかどうかを検討します。 全体の分布から間接的に見るのではなく、直接職種別の賃金を見ます。 先ほどの資料から、パートタイム労働者の1時間あたり所定内給与の高い(1,500円以上)を取り出してみます。
女性パートタイム労働者の高賃金の仕事
職種構成割合(%)所定内給与(円)占有率(%)
医師0.18,85218.5
大学教授0.05,4960.3
大学助教0.04,5360.6
各種学校専修学校教員0.13,34223.5
高校教員0.13,21117.3
理学療法士作業療法士0.02,6223.7
航空機客室乗務員0.02,3447.7
薬剤師0.11,94417.2
観光バスガイド0.01,5953.9
理容師・美容師0.01,5526.2
臨床検査技師0.01,5476.9
看護師1.01,5289.6
高賃金の職種は存在しています。医師の賃金など販売店員の10倍以上です。また、例外はありますが、一般労働者で高賃金の職種がパートタイム労働者でも高賃金であるという傾向があります。 さてパートタイム労働者の賃金(1時間あたり所定内給与)は産業間でも、企業規模間でも、年齢間でも、勤続年数かんでもあまり大きな差はありません。しかし、職種間では大きな差があるということは何を意味しているのでしょうか。簡単に言えばパートタイム労働者の賃金を決めているのは仕事であるということです。職種別の外部労働市場を通じて、決まっていると言ってもいいでしょう。パートタイムの労働市場はかなりよく機能していると言えるかもしれません。 少なくとも (5)「その意味で、まずパートの賃金を仕事に応じて決めるシステムが必要である。」 とは言い切れません。 にもかかわらず、 (4)「にもかかわらず、パートの仕事として大括りにされ、賃金が低く抑えられているのが実状である。」 と映るのはなぜでしょうか。 それは、 1 高賃金職種に就くパートタイム労働者の割合が少ないこと 2 低賃金職種ではパートタイム労働者の占有率が高く、高賃金職種では低いこと のため、パートタイム労働者の平均賃金が低くなっているためです。 もちろん、同じ職種でも一般労働者の賃金の方が高いという要因もあります。このような現象が生じる理由の候補が『労働市場の経済学』146ページに紹介されています。必ずしも不合理とばかりとは言えません。 人気blogランキングでは「社会科学」の14位でした。クリックしていただいた皆さん、ありがとうございました。今日も↓是非クリックをお願いします。 人気blogランキング