介護職員 その6

介護職員 その5」の説明を少し。

「その5」で書いた、財は介護保険の場合は介護サービスです。

企業は「介護サービス事業者」です。

「独占的買い手」の提示する価格Pというのは、政府が決めている「介護報酬」です。

独占的買い手の最大の買い入れ量はQは、政府が適切と考える介護サービスの提供量です。

賃金Wは介護労働者の賃金です。

さて、政府が何を目標に介護保険を運営するのかといえば、それは適切な質、量の介護サービスを提供することです。介護保険は、政府が直接労働者を雇って、サービスを提供するのではなく、介護事業者を通じて提供するという仕組みです。

介護事業者は、魔法使いではなく、介護サービスを提供するためには、それに見合った労働者を雇用しなければなりません(生産の技術的条件の制約)。また、介護事業者は奴隷を所有しているわけでもなく、労働者を徴用できるわけでもありません。労働市場で競争しながら労働者を雇うしかないのです。

このような条件の下で、政府が提供すべきサービスの質を定め、サービスの提供すべき量をQと決めたとします。

このサービスの提供のためには、技術的条件から何人の労働者が必要かが決まります。L人の労働者であるとします。この人数は自動的に決まってきて、政府が勝手に変えることはできません。

労働市場で競争しながら、このL人の労働者を雇うためには、ある水準の賃金を払わなければなりません。この賃金は市場で決まり、政府がこれより低い水準で決めたりすると人手が集まりません。この労働者一人あたりの賃金をWであるとします。

すると、サービスをQ提供するために必要なコストはL×Wです。(実際には他にもコストはありますが、簡単化のためにここではないものとします。)

事業者は損をしてまで、事業を営んだりはしません。少なくともコストは償わなければなりません。事業者の収入はサービスの単価Pに提供したサービス量Qを掛けたものです。

すると収支均衡の条件は、こうなります。

  P×Q=L×W

Qが決まると、技術的な条件からLが決まり、Lが決まるとWが決まります。すると、政府Q、L、Wが決まればPは自動的に決まります。Qを決めればPも決まるのです。政府は労働市場の条件(と技術的な条件)に順応して、Pを決めることにより、始めて、Qの提供という目的を達成できるのです。

なお、保険である以上、収支は均衡しなくてはなりません。もし、政府は何に保険料をかけるかは決められます。45歳以上の労働者の賃金などです。これを保険料賦課のベースとします。これは経済情勢などで変わってきます。この額をBとしましょう。

すると保険料率をrとすると、経済状況に応じて決まるBを前提として、P×Q=r×Bとなるようにrを決めなければなりません。これも、介護サービスをQ提供するためには避けられないことです。

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