介護職員 その5

bewaadさんの問題提起(http://bewaad.com/20060108.html)にお答えしてきたのですが、「介護職員 その4」にbewaadさんからコメントをいただきました。需要超過があるときに価格が上昇しないのはどんな理由によるものかというお尋ねです。一応のお返事をします。経済学の知識が全くない方にはわかりにくいかと思いますが、今回は経済学の用語を全く使わずには書けませんのであしからず。

1 ある財1単位の生産にはα単位の労働がそしてこれだけが必要だとします。固定係数の生産関数で、Y=1/α・Lです。

2 生産者は利潤最大を目指すとします。ただし利潤ゼロでも社会的責任から供給を義務づけられているとします。損失が出る場合は、供給責任を負わないとします。

3 この財の市場では買い手独占が成立しており、買い手は、価格Pで、最大限Q単位まで買うとしています。なお、Q以下の量でも買い手は購入するとします。また、買い手は押し買い、つまり供給強制はできないとします。

4 労働市場では自由競争が行われており、労働供給は賃金Wが上がるほど増えるとします。

さて、このような条件の下で労働市場での需要曲線はどのような形になるでしょうか?

この財を生産するのに必要なコストは賃金だけですから、1単位あたりのコストはαWです。

1単位あたりの収入はPです。

財の価格と賃金について、三つの場合分けをします。

1 P>αWのとき(W<P÷αのとき)

1単位あたりの利潤は、P-αWです。利潤最大は独占的買い手が買い入れる最大限生産し、供給した場合の(P-αW)×Qです。従って、労働需要量 Ld=Q×αとなります。

P>αWである限り、賃金Wの水準に関わらず、労働需要量は不変です。

2 1 P=αWのとき(W=P÷αのとき)

1単位あたりの利潤は、P-αW=0です。利潤はどれだけ生産しても0です。供給責任からQだけの生産を行おうとします。従って、労働需要量 Ld=Q×αとなります。

この量はP>αWである場合と同じです。

3 1 P<αWのとき(W>P÷αのとき)

1単位あたりの利潤、P-αW<0です。利潤最大は生産量0のときです。このとき利潤は0です。従って、労働需要量 Ld=0です。

P<αWである限り、賃金Wの水準に関わらず、労働需要量は不変です。

さて、3つのケースを考えます。

ケース1

賃金がW=P÷αのとき(P=αWのとき)の労働供給量Lsが、この条件の下での労働需要量 Ld=Q×αと等しければ、労働市場は均衡します。賃金W、現実の労働量Q×αで均衡します。このときの生産量はQです。利潤は0です。

ケース2

労働供給量Lsが、この条件の下での労働需要量 Ld=Q×αより多いときどうなるでしょうか。

労働供給がLdとなるような賃金水準W’(これはWより低い水準です。W’<W)で均衡します。生産量はQです。利潤は(P-αW’)×Qです。

ケース3

労働供給量Lsが、この条件の下での労働需要量 Ld=Q×αより少ないときどうなるでしょうか。

労働供給がLs、賃金水準Wで均衡します。労働市場では需要超過です。しかし、これよりもわずかでも賃金が上がると、労働需要は0になりますので、賃金は上がりません。これが労働市場での超過需要があっても、賃金が上昇しないメカニズムです。なお、生産量Q’=Ls÷αです。当然、Q>Q’です。利潤は0です。

私は、現在の介護労働市場では、ケース3が成立していると考えています。

グラフがうまく書けるかどうか。

             

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W=P÷α           *      |                

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---------L=0---------------- L=Q×α ------------

さて、買い手が購入量Qを達成したいと思えば、ケース1のようにL=Q×αで労働市場の需給が一致し、生産量がQになるようにしなければなりません。このためには、αを変えられないとしたら、Pを引き上げて右側の労働需要直(曲)線が生産量Qに対応する労働量L=Q×αで、労働供給曲線で交わるようにしなければなりません。

(2006年1月13日朝追記 生産条件を説明した文章に整合的になるように生産関数のLの係数をαから1/αに変えました。これに伴い労働需要量を Ld=Q×αに、現実の労働量もQ×α変えました。また、3の「P<αW」のときの不等号の向きを変えました。さらに、グラフのQをL=Q×αに変えました。すべて不注意によるミスでした。すいません。明日、もう一度ミスがないかどうか確認します。)

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