介護職員 その4

(「介護職員 その3」に引き続き、bewaadさんのTB「介護等における市場競争」へのお返事です。) 今日は、介護サービスの本質に関連する部分です。前回の制度論よりも根本的な部分です。 bewaadさんのご主張の前提である「介護サービスなどは家庭でも供給できる。」というのは、現在の日本で成立するでしょうか?多くの介護を必要とする方にとってこれは当てはまらないでしょう。 この前提をもう少し詳しく書くとこうなります。 1 介護を必要とする方には家族がいる。 2 その家族の中には介護サービスを提供できる人がいる。 3 必要とする介護サービスの質、量ともに家族の提供できる介護サービスの範囲に収まる。 4 サービスを提供する家族の生活は何らかの形で支えられており、介護の合間に働く程度でよい。 家族の状況を調べてみましょう。厚生労働省の平成15年国民生活基礎調査の結果です。 まず、65歳以上の方のいる世帯の状況です。
65歳以上の方のいる世帯の状況(千世帯)
項目項目
合計17,273
1 単独世帯3,4117762,635
2 夫婦のみ4,845
うちどちらも65歳以上3,594
3 夫婦と未婚の子1,721
4 一人親と未婚の子1,006
5 三世代4,169
6 その他2,120
基礎になったデータはこちらです。↓http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/data/030/2003/toukeihyou/0004715/t0100182/T29_001.html 単独世帯では、介護してくれる家族はいません。元々一人暮らしなのです。家族がいないのです。1の条件が満たされないのです。 では、家族が言えばいいのでしょうか? 夫婦のみの世帯は、夫婦どちらかが相手を介護できるかもしれません。二人とも年を取っていけば、それは困難になりますし、二人とも介護を必要とすることもあるでしょう。どちらも65歳以上という組み合わせが多いことに注目してください。 夫婦と未婚の子、一人親と未婚の子の組み合わせは、希望が持てますが。特にこの数が多い場合に。 このように、2の条件が内場合、介護できる家族がいない場合がかなりあると言わざるを得ません。 では、介護できる家族がいればそれでいいのでしょうか? よく、こんな例が出されます。病院で、入院患者3人に看護師が1人。まあまあの水準と思われるかもしれません。でも、入院患者は24時間病院にいます。看護師さんは8時間労働です。家局ある時間帯を取れば、患者9人に看護師さん1人なのです。介護も着替え、洗顔、朝ご飯、歯磨き、トイレ、昼ご飯、散歩、夕食、入浴、トイレなど1日24時間必要な場合もあります。そんなケースでは1対1では対応し切れません。介護できる家族がいても、その提供できるサービスでは十分ではないケースがでてきます。 そして、最後に介護する家族はどこから収入を得るのでしょうか?収入を得なければならないなら、結局働き、その収入で自分の生活費を出し、残りわずかな額で買える範囲のサービスを買い、世湯のある時間出、自分で介護する他はありません。 結局、家族による介護は不可能なケースがあまりにも多すぎるのです。ですから、bewaadさんのご主張、「介護労働者の賃金は家族の賃金よりも安くなければならない。」も「サービス産業が発展するためには、さらなる機械化による効率化かサービス単価の安い国からのサービスの輸入しかない」も成立しないのです。 次に、80歳以上の方の人数です。
80歳以上の方の状況(千人)
項目男女
合計5,2031,7473,456
1 単独世帯851165685
2 子と同居3,2779192,359
基礎になったデータはこちらです。↓ http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/data/030/2003/toukeihyou/0004715/t0100188/T34_001.html 子と言っても80歳以上の方の子供です。50歳以上でしょう。 日本のように長寿の国で、介護を家族だけで行うというのはもはや不可能です。特に問題なのは女性の介護です。何しろ「簡易生命表」で書いたように女性は長生きなのです。10万人生まれれば2万人は95歳まで生きるのです。介護保険はこのような実態を踏まえて、作られたものです。前回制度で説明しましたが、その制度はこのような基礎に立っています。 最後に、私の主張です。自分でやっても大変なことを人にやってもらうなら、その人にそれなりの待遇をすべきです。 人気blogランキングでは「社会科学」の15位でした。クリックしていただいた皆さんにお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。今日も↓是非クリックをお願いします。 人気blogランキング