雇用保護 その3

雇用保護 その2」について さて、整理解雇の場合、有名な判断基準があります。次の四つです。いずれも抽象的で、実際に裁判になってみないとどんな判断が下されるか、予想がつかないと批判する方がいます。全部満たさなければならないのか、全体として判断されるのかも不明確です。この点、後にふれようと思っています。 1 人員削減の必要性があること。  何を持って必要だというのか、明確ではないのですが、個々のケース毎にその裁判に当たる裁判官が判断しています。裁判官は経営の専門家ではないので、経営者が行う高度の経営判断だとして認められるケースが多いという説があります。私には、この説の、当、不当を点判断するだけの材料がありません。  もし、「ある労働者が基準は満たしているが、さらに有能な人が雇えるので解雇する。」というケースがあったら、どんな判断がでるでしょうか。自分がそう言われたらさぞいやな気分になるだろうと思いますが。 2 人員削減の手段として整理解雇が必要であること。  整理解雇、つまり本人に責任がないのに指名解雇するというのは最後の手段だという考え方が、この条件の基礎にある考え方でしょう。  これがくせ者です。残業の削減、新たな雇い入れの停止、出向、配置転換、希望退職の募集などの措置を執ったかどうかが判断材料になるでしょう。これらの措置には異存はないでしょう。  なお配置転換について肯定的な理由も機会があれば、考えてみたいと思っています。  問題は正規労働者を解雇する前に、有期契約の労働者の契約更新、雇い止めを行うことを条件とするかどうかです。もし要求するなら、明らかに裁判所は、正規労働者をより強く保護していることになりますから。  なお、企業の側からすれば、希望退職、つまり退職金の割り増しなどをして退職を募るには危険が伴います。  まず、有能で残って欲しい人が辞めてしまうかもしれません。有能な労働者が辞めてライバル企業に移籍したりしたら、目も当てられません。  また、予想より多数の労働者が応募してくる場合も困ります。全員認めれば人手不足に陥りますし、割増退職金などが払えないと言う事態にも陥りかねません。一部認めなければ、一旦辞める気になった労働者を抱えながら経営をすることになります。社内の空気は確実に悪くなるでしょう。応募者が予想以上に多かったがすべて認めたJTの例を労務屋さんが紹介されていますが、(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20050218)、JTはお金があったから対応できたのでしょう。認めなかったときの社内の空気への配慮がどれぐらいあったかは分かりませんが。  ですから、企業の立場からは、整理(指名)解雇が望ましいということではないかなと思います。 3 解雇される労働者の選定が合理的に行われていること。  恣意的なものであっては困るということです。客観的な基準が必要です。また、基準があったとしても「腰のくびれた髪の長い女性は対象にしない。」などという基準ではだめです。みんなが納得するようなものでなければなりません。  これも議論は様々です。欠勤、人事評価、規律違反、勤務態度など評価を基準にするのはどうか? 勤続年数の長いものは後にし、短いものから解雇するの波動でしょうか?扶養家族がいて失業すると打撃が大きいものをはずすのを認めるのはどうでしょうか? 4 妥当な手続きが踏まれていること。  組合や労働者代表に情報を提供し、話し合ったかどうかです。この場合、正規労働者だけの労働組合や組合員のほとんどが正規社員という組合が多いことが、影響を与え得ます。 次回は、このような判例、基準法の経済学的な意味を考えてみたいと思っています。少し、方向が変わるかもしれませんが。 (続く) 人気blogランキングでは「社会科学」の38位でした。クリックしていただいた方、ありがとうございました。今日もここを↓クリックお願いします。 人気blogランキング