国債償還費

この記事を書くことになった経緯は次の通りです。

1 bewaadさんが「リフレ政策に勝算ありや(http://bewaad.com/20050823.html#p01)」というエントリで、リフレ政策と財政の持続可能性に関する試算を発表されました。

2 これを受けてcloudyさんが「財政赤字カリキュレーター」を作成されました。

http://cloudy9.fc2web.com/mgodz.html

http://cloudy9.fc2web.com/mgodz-desc.html

3 この「財政赤字カリキュレーター」をbewaadさんがご自身のエントリ「財政シミュレーションスクリプトhttp://bewaad.com/20051120.html#c03)」で紹介されました。

4 これに便乗して、私が、cloudyさんに「歳出から国債償還分を除いておく」必要があるのではないかと質問をしました。(なぜ、そうでなければならないと私が思ったかの説明を付けませんでした。cloudyさん、bewaadさん、すいませんでした。)

5 cloudyさん、bewaadさんからその必要はないという回答をいただきました。

6 そのお答えに、十分納得がいかないので、この記事を書くことにしました。元々、私が必要な説明をせずに質問したことが原因で、申し訳ないと思っています。

さて、本論です。

国の財政を考えるとき支出は、一般の政策目的に使う支出(「一般歳出」)が基本です。

すでに国債を発行しているときは「利払費」が必要です。また国債発行時点で計画されていた「償還費」も必要です。さらに発行時点で借り換えを予定していた国債の借り換えを前提とした「借り換える国債の償還費」も必要です。この「償還費」と「借り換える国債の償還費」は別の概念で、日本の一般会計ではこの「償還費」だけが「国債費」の一部として計上されています。

一方、歳入は「税などの収入」が基本で、さらに「国債借り換えのために発行する国債による歳入」があります。

この二つの歳入が、歳出合計に達しない場合、「新発国債(新規財源債)」を発行して差額を賄うことになります。(国有財産の売却は「税などの収入」に含まれていると考えてください。)

すると、次の等式(1)が成り立ちます。

「一般歳出」+「利払費」+「償還費」+「借り換える国債の償還費」=「税などの収入」+「国債借り換えのために発行する国債による歳入」+「新発国債(新規財源債)による歳入」・・・(1)

ここで、「借り換える国債の償還費」は「国債借り換えのために発行する国債による歳入」に等しいので、(1)式の両辺から差し引いても等号はそのまま成り立ちます。

「一般歳出」+「利払費」+「償還費」=「税などの収入」+「新発国債(新規財源債)による歳入」・・・(2)

では、このような予算を執行したとき、国債発行残高がどのように変化するかが問題です。

「期首国債発行残高」から、償還した国債を差し引き、新規に発行した国債(新規財源債)を足すと「期末の国債残高」になります。(借り換えは残高に影響しませんから無視できます。)これは当然、次期の「期首国債発行残高」です。

すると国債発行残高の純増額は

国債発行残高の純増額」=「新発国債(新規財源債)による歳入」-「償還費」=「一般歳出」+「利払い費」-「税などの収入」・・・(3)

となります。

さて、一番最初でご紹介したbewaadさんの「リフレ政策に勝算ありや(http://bewaad.com/20050823.html#p01)」の試算では、「歳出」を「利払いを除く歳出」の意味で使われており(金額は75.4兆円です。)、 これを受けたcloudyさんも「財政赤字カリキュレーター」を作成され際、同じ概念、数字、数字をそのまま使っていらしゃいます。「歳入」の方は私の「税などの収入」の意味で使っていらしゃいます。

また、「財政赤字カリキュレーター」では「歳出」「歳入」+「利払い費」を「国債の純増額」とされています。

以上の理解に基づいて、

「一般歳出」+「利払費」+「償還費」=「税などの収入」+「新発国債(新規財源債)による歳入」・・・(2)

を「財政赤字カリキュレーター」の用語(○○○で示します。)で書き換えるとこうなります。

「歳出」+「利払費」=「歳入」+「新発国債(新規財源債)による歳入」・・・(4)

整理すると

「歳出」+「利払費」-「歳入」=「新発国債(新規財源債)による歳入」・・・(5)

となります。

そして(5)式の左辺を「国債発行残高の純増額」とされていますから、

国債発行残高の純増額」=「新発国債(新規財源債)による歳入」・・・(6)

とされていることになります。

この式と(3)式を比べていただくと、「財政赤字カリキュレーター」では「償還費」の分だけ、国債発行残高の純増額を過大に見積もっていることが分かります。これは一般会計の歳出の中に国債発行時点で計画されていた「償還費」が含まれていることを見逃したためではないかと思います。

「これを修正するためには「歳出」から「償還費」を差し引く必要があるのではないか?」というのが私の質問です。

なお、bewaadさんのコメントにあるように「国債整理基金」を導入すると、「償還費」は「あらかじめ予定された償還のための国債整理基金への繰り入れ」となりますが、この場合「国債発行残高の純増」は「国債整理基金による国債償還額」分だけ減ることになり、この両者が同額なら、結論は変わりません。なお、国債の償還のための繰り入れがが支出の中にあるので、同額の新規発行国債を借り換え債とみなすと考えてもいいと思います。

17年度の国債費は18.4兆円(http://www.mof.go.jp/tokusyu/sp.html)このうち利払い費が8.9兆円(http://www.mof.go.jp/zaisei/con_04_g04.html)、国債整理基金への繰り入れが9.4兆円です。また国債整理基金による普通国債の償還も9.4兆円です(http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/siryou/syoukan01.pdf)国債残高はこれぐらいです(http://www.mof.go.jp/zaisei/con_03_g01.html)。

なお、私も簡単な試算をしてみましたので、ご覧いただければと思います。

財政再建・最後の試算」http://takamasa.at.webry.info/200508/article_15.html

「『財政再建・最後の試算』の修正 前編」http://takamasa.at.webry.info/200509/article_5.html

「『財政再建・最後の試算』の修正 後編」http://takamasa.at.webry.info/200509/article_6.html

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