連邦

政府の大きさ その1」にInoueさんからコメントで質問をいただきました。答えが長くなるので記事にします。

 国の人口規模が大きすぎ、情報コストが大きくなってしまいて、社会的意志決定が不効率になるという理論的な可能性は、確かに存在すると思います。

 しかし、日本の場合、連邦化することによって問題が解決するかどうかは疑問です。

 連邦というと二つのタイプがあると思います。

 一つは元々ある程度歴史と伝統のある独立国、あるいはそれに準じたものがいくつかあり、それが連邦を結成したというものです。具体的にはドイツ、スイス、以前のユーゴスラビアがあります。

 もう一つは、元来はヨーロッパ諸国の植民地であった「州」がいくつか集まって作ったものです。アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアの例があります。以前の南アメリカもそうでした。

 これらの独立国や州は、それぞれ伝統の中で司法、立法、行政、社会慣習、文化を築いており、相当な異質性を持っていました。

 例えば、ドイツであればプロテスタントの国とカトリックの国がありました。スイスはドイツ語、フランス語、イタリア語の州があります。カナダのケベックは言語、法体系が違っています。

 それらが一つの連邦を結成したのですから、その連邦のメンバーの中で国や州毎に差があって当たり前という感覚、コンセンサスがあります。

 仮に日本を分割して、連邦化すれば、どこまでを連邦の権限、つまり連邦内では共通になる部分とし、どこを国や州の独自性を持ったものにするかという判断が必要になります。

 日本のように共通の歴史と伝統、言語、宗教を持ち、一つの国として長くやってきた場合、共通の制度でなくなると言うことに強い抵抗があると思います。民法や刑法が違うというのは論外でしょうし、税制、医療保険、年金制度、義務教育の年限なども共通にという声が圧倒的だと思います。

 このため、新しく作られる国の権限は小さく、せいぜい地方分権のレベルにとどまると思います。

 国の権限が小さければ、国単位で解決できる問題はごくわずかなのに限られてしまいます。ということは、「連邦化で解決する問題はごくわずか」、となるような気がします。

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