政府の大きさ その2

今回は、「政府の大きさ その1」でお示しした表の解説です。

まず、支出の説明から始めましょう。

政府の支出は、次のようなものがあります。

A 他人の財産を利用させてもらったことに対する対価の支払い。

 お金を使わせてもらった場合には、利子を支払い、不動産を使わせてもらったときには賃貸料を払います。表ではⅠで示しました。

B 一般には、他の主体が一般政府以外のために何かをすることを助けるための補助金の支払いですが、「国民経済計算」では「補助金」は、企業に対するものであって、企業の経常費用を賄うために交付されるものであり、かつ財・サービスの価格の引き下げに用いられるものを「補助金」と定義しています。この狭い意味での「補助金」を表ではⅡに示しました。

C 経常移転の支出

 移転というのは購入とは違って、相手から何かしてもらう、何かをもらうための支払いではなく一方的な支払いです。反対給付のないものです。経常移転は移転の内、支払う側の毎年の収入から支払われるものです。

 表のⅢの「社会給付(現物を除く)」とⅣの「社会給付以外の経常移転」がこれに当たります。Ⅲの「社会給付(現物を除く)」には、老齢年金などの現金による支出、生活保護の支出などがあります。

財やサービスの提供は「現物」と言うことになりますからここには含まれません。

D 「現物社会移転」の支払い

 これも移転なのですが、お金ではなく一般政府が購入するか自分で作った物・サービスを無償で提供するための費用の支払いです。表Ⅴに示されています。二つに分けられています。1の「現物社会給付」は具体的には医療保険の医療や介護保険の介護サービスを提供するための費用の支払いです。2の「個別的非市場財などの移転」は、教科書購入費や、教育、保健衛生など個別的な家計に対するサービスを提供するための費用の支払いです。

E 「集合的最終消費支出」

 表Ⅵに示しました。これは家計や企業のためではなく社会全体に対するサービス提供のための費用の支払いです。具体的には、外交、防衛、警察などの費用です。夜警国家的でも提供するようなサービスのための費用の支払いと言ってもいいかもしれません。経済学を学ばれた方は排他性のない財・サービスと考えていただいても結構です。

 

F 「資本移転」

 これは移転の内、受け取る側の総資本形成などの資本蓄積、あるいは長期的な支出の資金源泉となるもので、かつ一般政府の資産か貯蓄から賄われるものです。政府が民間の鉄道建設に補助する場合などがあります。

G 「純固定資本形成」

 道路、ダム、建物などの構築物や船舶、機械など生産することのできる資産を増加するための費用が総固定資本形成です。これには土地は含まれません。すでにある固定資本が、通常の破損、損傷、予見できる原質などによって減耗した部分のことを固定資本減耗といいます。総固定資本形成から固定資本減耗を差し引いたものが純固定資本形成です。

 固定資本形成は一般政府による投資、固定資本減耗は減価償却と考えると分かりやすいでしょう。

 これは支出ではありますが、支出に応じて固定資本の形で資産がが残ります。

H 「土地の購入(純)」

 これは単純です。土地を買った額と売った額の差です。これも支出ではありますが、支出に応じて土地という資産が残ります。

 さて、これらを合計したものを、表の「支出合計」で示しました。なお、固定資本減耗を差し引くかない額を出すこともできます。

 多分、このような表は、あまり見慣れないものではないかと思います。国の経済全体と言うことであれば、3ヶ月に一回発表されるGDP速報、年一回のGDP年報などで示される表の方が有名です。

 あの表(国内総支出の表です。)との対応関係を示しておきます。

 国内総支出の表の「政府最終消費支出」はこちらの表の「現物社会移転」と「集合的最終消費支出」の合計です。こちらの表では国内総支出の内訳を見えるようにしてあるのです。

 国内総支出の表の「総固定資本形成」のうち一般政府分が、はこちらの表の「総固定資本形成」です。

 この二つは、政府が自ら生産して自ら購入する、あるいは企業が生産したものを購入するものです。

 これに比べてかなり大きな活動を政府が行っていることが分かっていただけると思います。

 トータルで見た政府の活動の中心は「社会給付」です。参考にその額を示しました。よく「土建国家」といわれましたが、「総固定資本形成」に比べても「社会給付」の方が常に大きいのです。しかも、「総固定資本形成」がそれほど増加していないのに対し、「社会給付」は増加を続けています。

「社会給付」の支出合計に対する割合は、1980年度、31.6%、1990年度、35.3%、2000年度、42.0%、2003年度、46.7%と上昇を続けています。

 現物を除く「社会給付」は年金などの形で個人の所得となり、そこから個人の消費が行われています。また、「現物による社会給付」は事実上、個人の消費の一部を形成しています。その支出が個人に便益を与えているという意味でです。

 「社会給付」に含まれない「個別的非市場財などの移転」も個人に対しては消費によく似た役割を果たしています。この支出の割合は1980年度の11.6%から2003年度の10.6%まで緩やかに

低下してきています。

 やや意外ですが、夜警国家的支出である「集合的最終消費支出」の割合も、「社会給付」と同様に、1980年度、18.2%、1990年度、19.0%、2000年度、19.7%、2003年度、21.3%と上昇を続けています。

 割合が低下しているのは「利子」と「補助金」です。1980年度にはそれぞれ9.7%と4.7%あったものが、2003年度には7.7%と2.1%に低下しています。

 「社会給付」や「個別的非市場財などの移転」は広い意味では所得の再配分の機能を持っています。現在の日本の政府活動は固定資本への投資ではなく「再配分」に重点を置くようになったと言えるでしょう。

 次回は、収入について説明したいと思います。

 なお、この表の説明をするのは、これが初めてです。分かりにくいところがあれば、ご遠慮なく質問のコメント、TBを下さい。できる限りお答えしたいと思います。必要があれば、この記事を修正、追加したいと思っています。

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