今回は、「
実収入」で説明した「実収入」に引き続いて、「
可処分所得」と「消費支出」について説明します。
その説明をするためには、前もって「実支出」と「非消費支出」を説明しなければなりません。
「実支出」から始めます。
収入の方では、実収入とは資産の減少や負債の増加を伴わない収入、実収入以外の収入とは貯金の取り崩し、土地の売却など資産の減少を伴う収入、借金など負債の増加を伴う収入でした。
実支出も同じように考えます。貯金をする、株を買う、
国債を買う、土地を買うという資産の増加を伴う支出は実支出ではありません。日常用語とそう違っているわけではありません。給料を
普通預金に入金したのを給料を使ってしまったとは誰も思わないでしょう。また、借金の返済、住宅ローンの返済は負債の減少を伴いますから、やはり実支出ではありません。
裏から言うと実支出と言うのは、資産の増加や負債の減少を伴わない支出です。では実支出の中身は何でしょうか?二つに分けることができます。「消費支出」と非消費支出です。ここで初めて消費支出の話が出てきます。
消費支出と非消費支出を区分しなければならないのですが、その差は基本的には、支出と引き替えに何か自分で使うものを手に入れられるのか、あるいは強制的に取られて何も手に入らないかです。
非消費支出の代表的なものは、税金、
社会保険料ですが、これは払ったからといって何かを直接手に入れられるわけではありません。また、借金の利子の支払いも非消費支出です。
この非消費支出ではない、何かを手に入れられる支出、ごくふつうの支出、が消費支出です。食べ物、着物、家賃、電気水道代、交通費等です。なお、自動車や家電製品など耐久
消費財は、財産として残るから実支出ではない、従って消費支出でもないとはなりません。それほど長く持つわけではありませんし、財産としての価値はあまり無いでしょう。これらも消費支出です。このあたり、必ずしも理論で割り切れないところがあります。
さて、最後に「
可処分所得」です。これを考えるには手取り収入と考えるのが一番早道です。
財産の減少、負債の増加に影響しない収入が実収入でした。また、実支出も財産屋負債の変化を伴わないものでした。二つが同じ額、例えば実収入が40万円、実支出も40万円だとします。収支が釣り合って、資産、負債の変化は起こりません。では、実収入が実支出を上回ると何が起こるでしょうか。実収入が50万円、実支出が40万円とすると、10万円余ります。これは黒字です。現金の形で残すか、預金するか、家、土地を買うか、借金を返すか(これらは全て実支出ではありません。)何にせよ黒字でです。
少しややこしいのですが、簡単な式を使って説明するとこうなります。
実収入-
実支出=黒字。
で、
実支出=消費支出+非消費支出でしたから、
実収入-(消費支出+非消費支出)=黒字。
と書き換えられます。( )をはずすとこうなります。
実収入-消費支出-非消費支出=黒字
両辺に消費支出を足します。同じものを足すのですから=はそのまま成り立ちます。
実収入-消費支出
+消費支出-非消費支出=黒字
+消費支出
左辺の消費支出は+と-で消えてしまいます。右辺は順番を変えます。するとこうなります。
実収入-非消費支出=
消費支出+黒字
この左辺の「実収入-非消費支出」が「
可処分所得」です。収入から強制的に取られる分を差し引いた自由に使える所得です。
可処分所得=実収入-非消費支出=消費支出+黒字
上の式から分かるとおり、
可処分所得=消費支出+黒字です。自由に使える所得の内、消費してしまわなかった分が黒字として残るのです。
可処分所得が多いと、普通は、消費も黒字も増える事になります。
勤労者世帯の
可処分所得と消費の過去の実績はこうなっています。また、物価が違うと同じ金額で買えるものの量が違いますので、
可処分所得と消費を消費者物価で割った、実質
可処分所得と実質消費も示しました。
勤労者世帯の可処分所得と消費支出(実質は2000年価格)年 | 可処分所得 | 消費 | 実質可処分所得 | 実質消費 |
---|
1983 | 344,113 | 272,199 | 417,107 | 329,938 |
1984 | 359,353 | 282,716 | 425,774 | 334,972 |
1985 | 373,693 | 289,489 | 434,022 | 336,224 |
1986 | 379,520 | 293,630 | 437,739 | 338,674 |
1987 | 387,314 | 295,915 | 446,729 | 341,309 |
1988 | 405,938 | 307,204 | 464,992 | 351,895 |
1989 | 421,435 | 316,489 | 471,932 | 354,411 |
1990 | 440,539 | 331,595 | 478,327 | 360,038 |
1991 | 463,862 | 345,473 | 487,762 | 363,273 |
1992 | 473,738 | 352,820 | 489,905 | 364,860 |
1993 | 478,155 | 355,276 | 487,913 | 362,527 |
1994 | 481,178 | 353,116 | 488,010 | 358,130 |
1995 | 482,174 | 349,663 | 489,517 | 354,988 |
1996 | 488,537 | 351,755 | 495,474 | 356,749 |
1997 | 497,036 | 357,636 | 495,056 | 356,211 |
1998 | 495.887 | 353,552 | 490,977 | 350,051 |
1999 | 483,910 | 346,177 | 480,546 | 343,771 |
2000 | 472,823 | 340,977 | 472,823 | 340,977 |
2001 | 464,723 | 335,042 | 467,999 | 337,404 |
2002 | 452,501 | 330,651 | 459,859 | 336,027 |
2003 | 440,461 | 325,823 | 448,992 | 332,134 |
2004 | 444,966 | 330,836 | 453,584 | 337,244 |
実質
可処分所得も実質消費も1996年をピークとして減少を続けています。消費の落ち込みの理由に一つは、
可処分所得の減少です。
以下はエクセルをお持ちの皆さんへのおまけです。
1 最初に、第1列目の1行目に実質
可処分所得と書き込んでください。
2 次に、第1列目の2行目から23行目に、1983年から2004年の実質
可処分所得を、年の順に書き込んでください。
3 第2列目の第1行目に実質消費(前)と書き込んでください。
4 第2列目の第2行目から第12行目に1983年から1993年までの実質消費支出を書き込んでください。
5 第3列目の第1行目に実質消費(中)と書き込んでください。
6 第3列目の第13行目から第16行目に1994年から1997年までの実質消費支出を書き込んでください。
7 第4列目の第1行目に実質消費(後)と書き込んでください。
8 第4列目の第17行目から第23行目に1983年から1993年までの実質消費支出を書き込んでください。
9 この全体を指定して、グラフ作成のボタンをクリックしてください。
10 「散布図」を選んでください。
11 下の方にある「次へ」をクリックしてください。
12 どんどん「次へ」を選んでください。
13 最後に「新しいシート」を選んでください。
すると横に
可処分所得、縦に消費支出を示すグラフができあがります。
青い色が1993年までの消費のパターンを示しています。
黄色い色が1998年から2004年までの消費のパターンを示しています。
二つの時期の差がお分かりになるでしょうか?
可処分所得が増えると消費が増えるのはどちらも同じです。しかし、同じ
可処分所得に対する消費は1998年から2004年までの方が少ないことが分かります。
勤労者家計では、
可処分所得が同じでも消費を押さえるようになっているのです。生活態度が堅実になっているのです。しかし、
消費財を売っている企業にお勤めの方は「もっとお金を使って欲しい」と思ってらしゃるかもしれません。
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