「
家計調査」
で、いくつか専門用語を説明なしに使ってしまいました。ここで、説明をしておきます。
まず、実収入(「じっしゅう」にゅうと読みます。)から。これは、「家計調査」を知っている人でないと、まず聞いたことのない言葉だと思います。私も最初に家計調査を読んだときはよく分かりませんでした。かなり特殊な言葉とも言えるのですが、それほど複雑な概念ではなく、知っておくと以外に便利な言葉です。特に、自分の家計を考えるときに有益だと思います。
家計にはいろいろな形の収入があります。現金で入ってくるものもあれば、預金口座、貯金の口座に入ってくるものもあります。
家計調査では、これらの収入を実収入と実収入以外の収入に分けています。虚実という表現があるのですから実収入以外の収入は、虚収入と名付けてもいいと思うのですが、そうはなっていません。
ついでですが、虚実という対を使ったために分かりにくくなっているのが、数学で使う実数と
虚数です。実数はREAL
NUMBER の訳語です。まあ、REAL を「実」と訳すのは仕方がないのかもしれませんが、IMAGINAL
NUMBER 忠実に訳せば「想像上の数」を
虚数と訳したのはどうだったでしょうか。よく意味が通じなくなってしまったのではないかと思います。i、二つ掛け合わせるとマイナス1になる数というのは現実にはない、あくまで想像上の数というニュアンスが伝わらない気がします。
家計調査での実収入と実収入以外の収入は、将に虚実という概念が当てはまるような分類です。
家族の一員が働いて得た給与、持っている預貯金、債券、株などの利子・配当、持っている不動産から得られる家賃地代。老人や障害者が得ている年金、これらは実収入です。
では、実収入に含まれない収入ってどんなものでしょうか?貯金を下ろして手にした現金、満期になった定期預金、償還された
国債などの債券、株を売って得た収入などです。家や土地を売って得た収入も実収入ではありません。
さて、貯金をおろしたり、債券を売ったり償還を受けたときには、確かに現金収入(場合によっては預貯金の口座に振り込まれることもあります。)がありますが、一方でこれまで持っていた貯金、債券がなくなっています。土地や家を売ったときも、同じように現金収入(こちらの場合には預貯金の口座に振り込まれることが多いでしょう。)がありますが、一方でこれまで持っていた土地、家屋がなくなっています。このように、これまで持っていた財産を売ったりして、財産を減らしそれで得た収入こういうものを本当の収入だと思ってはいけません。このような収入を本当の収入だと思ってお金を使っていると、収入の範囲でしかお金を使っていないはずなのに、いつの間にか預金、貯金や土地、家屋などの財産がなくなってしまいます。こういう収入は虚しい収入なのです。家計調査でいう実収入ではありません。
もう一つ、虚しい収入があります。借金です。これは、説明の必要がないと思います。借金すればお金は手に入りますが、借金が増えます。
要するに、資産の減少、負債の増加を伴う収入は「実収入」ではないのです。
ところで、給料などの場合には、受け取るときに税金などが差し引かれています。実収入は差し引かれる前のものなのか、差し引かれた後のものなのか?これは差し引かれる前の「額面」の方です。
ちょっと、変だなと思われる方もいらっしゃるかもしれません。税金などを惹かれていれば自分のものにならない、自由に使えませんから。それに対応する言葉として、家計調査では実収入とは別に「
可処分所得」というものがあります。これと「消費」は次の記事にしようと思っています。今のところはです。
実は、家計調査で実収入が分かるのは勤労者世帯だけです。自営業の方などは、収入を国に知られるのがすごくいやなようで、あまり答えてくれると期待できないから調べないのではないかと思います。また、単身者世帯もよく分からないので、調べないわけではないのですが、二人以上の世帯を中心にしています。結局、所帯持ちの給料取りの世帯の状況を調べていることになります。
過去の状況はこうなっています。勤め先収入には家計全体のものと世帯主のものとがありますが、この表では世帯主のものを使いました。なお、一つの世帯で仕事をしている人が多いと実収入が寿得ますので、有業人員も示しました。また、物価が違うと同じ金額で買えるものの量が違いますので、消費者物価も示しました。
勤労者世帯の収入と消費者物価指数(2000年=100)年 | 実収入 | 勤め先収入 | 有業人員 | 物価指数 |
---|
1989 | 495.849 | 410,117 | 1.63 | 89.3 |
1990 | 521,757 | 430,670 | 1.64 | 92.1 |
1991 | 548,769 | 448,226 | 1.66 | 95.1 |
1992 | 563,855 | 462,253 | 1.68 | 96.7 |
1993 | 570,545 | 468,324 | 1.68 | 98.0 |
1994 | 567,174 | 468,000 | 1.67 | 98.6 |
1995 | 570,817 | 467,799 | 1.67 | 98.5 |
1996 | 579,461 | 474,550 | 1.66 | 98.6 |
1997 | 595,214 | 487,356 | 1.66 | 100.4 |
1998 | 588,916 | 480,122 | 1.66 | 101.0 |
1999 | 574,676 | 468,310 | 1.65 | 100.7 |
2000 | 560,954 | 460,436 | 1.65 | 100.0 |
2001 | 551,160 | 449,310 | 1.66 | 99.3 |
2002 | 538,277 | 438,613 | 1.64 | 98.4 |
2003 | 524,542 | 431,520 | 1.63 | 98.1 |
2004 | 530,028 | 436,616 | 1.63 | 98.1 |
2005 | - | - | - | - |
実収入も世帯主の勤め先収入も1997年がピークで、2003年まで減り続けています。2004年には少し回復しました。
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