「
財政再建・試算・現状」に引き続き試算します。
今回の試算は、
財政再建した場合のものです。
各ケース共通とした、
1 最初の
国債発行残高は、550兆円
2 最初の名目GDPは、500兆円。
については、当然変更しません。
第二のケースでも、次の条件は第一のケースと同じです。
1
名目金利は、1.4%。
2 名目GDP成長率は、-0.8%
変えるのは、第一のケースでは、16兆円だった毎年の
国債関係以外の支出の内税収でまかなえない額をゼロとする点です。
「
財政再建」の表現で言う、財政健全度は
「竹」に当たります。
プライマリーバランスが達成されているケースです。しかし、「梅の計算式」の均衡維持の条件、つまり、
国債発行残高×GDP成長率=利払費プラス税収で賄いきれなかった
国債の元利支払い以外の支出という条件は、満たしていません。
それはこういう理由からです。
「利払費」=「
国債発行残高×
金利」ですから、この式は次のように書き換えられます。
国債発行残高×GDP成長率=
国債発行残高×
金利+税収で賄いきれなかった
国債の元利支払い以外の支出
そして、右辺の「税収で賄いきれなかった
国債の元利支払い以外の支出」はゼロです。
すると、こう簡単化できます。
国債発行残高×GDP成長率=
国債発行残高×
名目金利
これが成り立つのは、名目GDP成長率と
名目金利が等しい場合ですが、今回のケースでは、成長率は-0.8、
名目金利は1.4%です。
すると、
国債発行残高×GDP成長率<
国債発行残高×
名目金利
となります。
元に戻すと、
国債発行残高×GDP成長率<
国債発行残高×
金利+税収で賄いきれなかった
国債の元利支払い以外の支出
になります。
さらに元に戻すと、
国債発行残高×GDP成長率<利払費プラス税収で賄いきれなかった
国債の元利支払い以外の支出
なお、名目成長率がマイナスであることを利用すると、簡単です。この計算式の左辺のは負の数です。そして右辺の「税収で賄いきれなかった
国債の元利支払い以外の支出」はゼロですが、「利払費」は正の数です。ですから、この計算式では、常に左辺<右辺です。
名目GDPの成長率はマイナスですから、だんだん小さくなっていきます。一方、利払い費の分だけ
国債残高は増えていきます。容易にご想像いただけるでしょうが、この場合も
国債発行残高を名目GDPで割った値は、だんだん大きくなり
破局を迎えます。
ただし、先に説明したように、名目成長率が正であっても、
名目金利より小さいときはこの計算式では、常に左辺<右辺です。ですから、名目成長率が正であっても、
名目金利より小さいときは、やはり
破局を迎えます。
説明が長くなってしまいました。具体的に試算した結果が次の表です。
第二の試算(兆円、倍)年 | 国債発行残高 | 名目GDP | 倍率 |
---|
0年 | 550 | 500 | 1.10 |
10年目 | 598 | 476 | 1.25 |
20年目 | 726 | 426 | 1.71 |
30年目 | 835 | 393 | 2.12 |
40年目 | 959 | 363 | 2.65 |
50年目 | 1,102 | 335 | 3.29 |
50年目の利払費は、15兆円、名目GDPの4.6%になります。
プライマリーバランスを達成しているので、第一のケースに比べるとましですが、やはり
破局と言っていいでしょう。
財政の支出を減らすか、
増税して16兆円も収支を改善するのは大変なことです。そのような努力をして
プライマリーバランスを達成しても、なお、名目GDPの成長率が
金利より低いとこうなってしまうのです。いかに、名目成長率を
名目金利より大きくすることが重要かが、お分かりいただけたと思います。なお、名目成長率がマイナスですから、長期的には税収は減っていくと考えるべきでしょう。
プライマリーバランスを達成し続けるためには、支出を継続的に減らしていく必要があります。
これも、
機械的な予測ですけれども。
では、利払い費も税でまかなえるような「松」まで、
財政再建を勧めたらどうなるでしょうか。
国債発行残高は、550兆円のままです。
しかし、名目成長率がマイナスならGDPは減り続けます。成長率がマイナス0.8%なら、50年後のGDPは335兆円。倍率は1.64倍です。
「松」で
破局を避けるためには、名目成長率をゼロか、プラスにすることが必要です。
結果を纏めましょう。
1 たとえ
プライマリーバランスを達成しても(財政健全度
「竹」)、名目成長率を
名目金利より大きくしない限り、
破局を迎える。
2 「利払費」を含むすべての支出を税収で賄っても(財政健全度「松」)、名目成長率がマイナスなら、
破局を迎える。
破局を避けるためには、
「竹」程度の
財政再建だけでは無理だということです。「松」でも難しいでしょう。(「松」自体至難です。24兆円収支を改善する必要があるのですから。)
単純な、
財政再建路線は
破局の先延ばし程度の効果しかありません。
次回は、物価を上げることにより、名目GDPを増やした場合の試算をして見ようと思っています。
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