国民生活白書

国民生活白書で、出産して退職した場合の機会費用の試算が行われています。http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h17/10_pdf/01_honpen/index.html

第3章第1節3でいろいろ試算されています。努力は認めます。善意で書かれていることも認めます。国民生活をよくしようという気持ちもよく分かります。

試算にはかなり無理な仮定をおいていることも、きちんと書かれています。しかし、この試算、あまりに仮定の上に仮定を積み重ねていないでしょうか。例えばですが、標準労働者を比較の対象にしているのはやはり無理な気がします。

また、標準労働者の中に子供を持つものがいること、つまりこの機会費用が子供を持つことの機会費用ではないことは、もう少し明確にしておくべきではなかったかと思います。

私がそう思う理由は、

子育ては、1億8千万円の損? その1」、

子育ては、1億8千万円の損? その2

子育ては、1億8千万円の損? その3」で書きましたので、ご関心があればお読み下さい。

なお、「実際に一番多いと思われるパート、アルバイトで再就職する場合」の機会費用は「(6年後再就職した場合で)2億2千7百万円」とあります。これは実は「パート・アルバイトで再就職して子供が大きくなって、手が掛からなくなってもずっとパート・アルバイトを続けた場合の機会費用」なのですが本当にこれが一番多いケースでしょうか。「思われる」で済ましていいのでしょうか。

ちょっと計算してみました。毎年100万人の母親が第一子を生み続けた場合、2億円を補おうと思えば、

100万人×一人あたり2億円=200兆円

かかります。国の一般会計の全支出の2倍以上の額です。

2億円などというのが流布すると、「それを補ってもらえることなどあり得ない。だから生まない。」と

判断する人が増えないでしょうか?

 なお、今回の白書を全体としてみれば、我が国の抱えている問題を率直に語ったいい白書だと思います。

 特に、若年層の格差の拡大、不況が少子化の原因になっている可能性があることなど勇気を持って書いたものだと思います。(少子化は、潜在成長率、期待成長率を引き下げます。つまり、白書は、構造改革が潜在成長率を引き下げた可能性を示唆しているのです。)

 一読、二読する価値のある白書です。

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