恐怖の統計委託

日本銀行が「生活意識に関するアンケート調査(第23回)」の計数を訂正しました。

http://www.boj.or.jp/ronbun/crishiki01_f.htm

訂正理由は、日銀の計算ミス、プログラムの誤りではありません。この統計は日銀が自ら実施したものではなく、委託して実施したものです。委託した相手に問題があったようで、一部の標本で「不適切な収集・集計が行われた」せいで結果が狂ったということのようです。

端的に言えば、「調査員がアンケートを採るのが面倒になって自分で記入して知らん顔をしていたか、記入してもらえなかった部分を自分で書いた、調査会社は、それを知ってか知らずにか、その調査票を撥ねずに、そのまま集計した。」ということでしょう。

仕事を人に頼んだとき、相手がちゃんと仕事をしてくれたかどうか、どうやって分かるのでしょう。

普通、二つの方法があります。一つは相手が仕事をしているところを監視し続けることです。もう一つは、できあがった結果を確認することです。住宅など買って済んでみてから欠陥が分かるというのはよくあることです。

ところが統計の場合、前者はコスト上、困難です。調査員が仕事をしているところをずっと見続けたら人件費は大変です。人件費が2倍になってしまいます。しかも監視要員がちゃんと仕事をするかどうかも分かりません。ぐるになる可能性もあります。

後者は、さらにひどく、原理的に不可能です。調査をするのは結果が事前には分からないからです。最初から分かっていれば、調査をする必要がありません。調査結果が間違っているかは分からないのです。勘のいい人がいて変だなと思っても証明できません。家なら設計図と違うことは分かりますが、統計はそうはいかないのです。よほど馬鹿な調査員がいてあり得ない数字を書いてくれば別ですが、普通は他の調査票を見て、似た数字を書き入れますから分かりません。(今回も正しく記入された調査票を集計した結果と不正な調査票も含めて集計した結果には、大きな差がありません。なお、正しく記入された調査標は2,000程度でで見ると回答率が50%です。相当な誤差がでます。もしもっと小さな標本だったら結果は悲惨なものになっていたでしょう。)

どうやら今回は、日銀が回答者のお礼の手紙を出したところ、「回答した覚えはない」という返事が多数来て、発覚したようです。委託する場合は、何かそういう手を使う必要があるかもしれません。

なお、調査会社が意図的にやったのか、調査会社が雇った、おそらくはアルバイトの調査員がずるをしたのかはよく分かりません。後者であるにせよ、調査会社に調査員をコントロールする能力、いい調査員を雇う能力がなかったことは確かです。日銀は調査会社名を公表していないので、どこの会社か分からないのですが・・・・。なお、日銀が経費をケチったのかもしれません。入札でとにかく安いところに委託したとか。

調査は、政策判断の基になっています。これが影響して日銀の判断が狂ったらとんでもないことです。調査の実施という地味な仕事には、あまり関心が払われません。分析の方が華やかで、人材、費用ともそちらに回される傾向があります。調査実施にも十分な関心と費用が払われるべきです。

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