一般に公正妥当と認められる逸失利益? その3
「一般に公正妥当と認められる逸失利益? その2」の続きです。
さて、裁判所が賃金構造基本統計調査の一般労働者、つまりフルタイム労働者を取っていることは妥当なのでしょうか。
男性についてはパートタイム労働者の数は未だ少ないのですが、女性の場合にはこの調査でフルタイム労働者は6,733,610人、パートタイム労働者は4,477,510人です。一般的な労働者の所得を考えるなら無視すべきではないように思われます。
現在の裁判所方式でパートタイム労働者まで含めた平均を試算してみましょう。この試算には、少し統計上の問題が残ることはお断りしておきます。
男性フルタイム労働者
年間賃金 542.7万円 労働者数 15,868,150人
男性パートタイム労働者
年間賃金 127.3万円 労働者数 1,236,530人
男性平均
年間賃金 512.7万円
女性フルタイム労働者
年間賃金 350.2万円 労働者数 6,733,610人
女性パートタイム労働者
年間賃金 117.5万円 労働者数 4,477,510人
女性平均
年間賃金 257.2万円
男性の場合でも30万円ほど低くなり、女性の場合は100万円近く低くなります。
また、パートタイム労働者だけではなく、臨時労働者や失業者まで考えると問題はもっと大きくなります。
なお、男女の格差は、フルタイム労働者だけを取れば、男性賃金の35%ですが、フルタイム労働者、パートタイム労働者の合計では50%です。女性がパートタイムをしているのは家事、育児の負担を負っているからである。その貢献も逸失利益の計算に反映させるべきであるという考え方も成り立つでしょう。もし、このように大きな男女格差を合理的なものとは考えられないということであれば、男女を分けずに一本化するという方法も考えられるでしょう。男女別の損得が明らかなので、簡単に合意は得られないでしょうが。また、時間あたり賃金を基に計算するという手法があるかもしれません。
また、賃金構造基本統計調査は、生きている労働者について調べたものです。年齢ごとの生存確率も計算に入れるべきかもしれません。
それでも何か、決まりがないと困ると言うことは分かりますし、最高裁判所の判例を変えるとなると大変なことになるでしょうが、現在の方式には少し無理が多いように思います。
データはいずれも平成16年賃金構造基本統計調査です。
こちらがフルタイム労働者のデータです。
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-rou4/data16/01.xls
こちらがパートタイム労働者のデータです。
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-rou4/data16/04.xls
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