一般に公正妥当と認められる逸失利益? その4

一般に公正妥当と認められる逸失利益? その3」の続きです。

最初に、bewaadさんが、「一般に公正妥当と認められる逸失利益とは 改」http://bewaad.com/20050619.html

で、修正情報を提供されていることをお知らせします。

実は今回bewaadさんの最初のエントリを改めて読み返してみました。そして私が「一般に公正妥当と認められる逸失利益? その2」でかいたことがこのエントリの内容と重複していることに気がつきました。両方読まれた方には二度手間をおかけしてしまい、申し訳ありません。

さて、割引率の考え方を説明してみたいと思います。1年後に300万円受け取るはずだったのにそれを受け取れなくされてしまった。この場合、この逸失利益を賠償する方法は単純に言えば二つあります。一つは1年後に300万円払うことです。もう一つは、今、1年後の300万円と同じ価値のある金額を支払うというやり方です。

「今、払う」という方法に決めたときいくら払えばいいのでしょうか。300万円だと、受け取った方はそれをノーリスクで運用して、つまり元本保証で運用しても、1年後には300万円+金利を受けとることができます。これでは多すぎます。そこで、金利分割り引いた金額を支払えばいいと言うことになります。もし金利が200%なら、今100万円払えば1年後に300万円になります。金利が100%なら150万円払えば1年後に300万円になります。金利が高いほど現在の支払額は少なくて済むわけです。

この金利が割引率と呼ばれます。

現在は」金利が低く、現実に元本保証のあるものでは、さらに低くなります。それでも金利は民事法定利率の5%とすべきであるというのが最高裁の判断です。恣意的に決めているのではなく、法的安定及び統一的処理が必要とされる場合は、民法はそう予定しているとしか解釈できないといっているのです。

これだと、実際に賠償金を受け取っても実際に運用できる金利は低いのですから、不十分な賠償になってしまいます。先ほどの例で言えば、実際の金利が100%しかないのに、法定利率は200%だから、100万円だけしかもらえないということです。1年運用しても200万円にしかなりません。100万円は泣き寝入りです。

どうも無理があるようなのですが、最高裁の判決ですから、そう簡単には変えられません。実定法を変えるしかありません。

どのような方法があるでしょうか。一つは、国会が毎年、法律を変えることです。ただ、この方法だと国会の都合で、改訂時期が変わりますし、どう決めるかもそのときどきの国会の判断次第ということになってしまいます。それが悪いという訳ではありませんが、不安定です。

そこで、客観的に決める方法を考えてみました。幸い、現在はノーリスクの運用手段である国債が大量に発行され、取り引きされています。金利も分かります。

6月20日だと、満期まで30年ある国債金利は2.3%程度、20年だと1.9%ほど、10年だと1.3%ほど、1年だと0.002%ほどです。これらを基準として毎年一定の時期に政令で民事法低利率を定めることとしてはどうでしょうか。大きな金利変動があったときは、臨時に変えるという条件をつけてもいいと思います。

現在も個人国債の利率は、半年ごとに国債市場での金利を元に変更されています。技術的に不可能と言うことはないと思います。

なお、長期の国債市場がそれなりに発達してきましたので、相当先の逸失利益の場合、短期の利率とは別にし、割引率を国債金利に準拠させると可能だと思います。

法律に詳しい方々、いかがでしょうか。

(お詫び 当初の記事では数字に誤りがありました。訂正と一部追加をしました。お詫びします。)

人気blogランキングでは「社会科学」の30位でした。クリックしていただいた方、ありがとうございました。今日も↓クリックをお願いします。

人気blogランキング