rascalさんのコメントに答えて その2

前回の続きです。

私は、フルタイム労働者とパートタイム労働者の間の「代替」、「補完」について次のように予想しています。

1 企業の中には、複数の職種があるのが普通です。

2 そして、職種によってパートタイム労働になじみ易い職種とそうでない職種があります。なじみやすいというのは、その職種はパートタイム労働に向いていて、その職種のフルタイム労働者をパートタイム労働者で置き換えやすいという意味です。

どのような職種がパートタイム労働になじみやすいか、具体例は、「同一労働同一賃金のアイロニー その3」 をご覧下さい。

3 同一職種のフルタイム労働者とパートタイム労働者の間には、「代替」関係が成立しています。たとえば、販売店員同士なら、フルタイム労働者を増やしてパートタイム労働者を減らすことも、その逆も可能ですから、「代替」関係が成立します。一方、異なる職種のフルタイム労働者とパートタイム労働者の間には、「補完」関係が成立しています。たとえば、もし、販売店のフルタイム労働者の人数を変えないまま、パートタイム労働者を増やし、その結果、販売が増えれば、仕入れを担当するフルタイム労働者は増やさなければなりません。これは「補完」です。

一般的にいえば、同じ職種の労働者同士は代替できるのです。

余談ですが、パートタイム労働者がここまで増えると、職種の違いを無視してフルタイム労働者とパートタイム労働者の「代替」、「補完」を議論する段階はそろそろ終わりにして、職種を明示的に取り入れた分析に進んだ方が有益な結果が出るのではないかないと思います。特に、原論文が出た後では、こちらに進むのが私のお勧めです。

4 さて、近年、パートタイム労働になじみやすい職種では急速にパートタイム労働者によるフルタイム労働者の代替が進んできました。一部の職種では「飽和」に近づいて、これ以上増えにくくなっています。(この点については、rascalさんと意見が違うようです。この側面については、また、いつか記事を書きます。)

5 しかし、パートタイム労働になじみにくい職種ではパートタイム労働者によるフルタイム労働者の代替は進んでおらず、かつ、企業はフルタイム労働を過剰に削減してしまいました。実際、企業が予想していた以上に景気が回復し、それとともにこのような職種でフルタイム労働者が不足していると感じらるようになったのです。このような職種ではパートタイム労働者を採用して補いをつけることは困難です。そこで、企業はフルタイム労働者の採用を増やし始め、これが最近のフルタイム労働者の増加につながっています。

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