子育ては、1億8千万円の損? その3

子供を産んだときの逸失利益を、計算するのは実はとても難しいというのが前回のエントリの結論です。なぜ、そんなに難しいかというと、単純なことで、女性の生き方も、女性自身の個性もあまりにも多様だからです。

少し話がさかのぼりますが、なんのために、こんなややこしい計算をするのでしょう。興味本位で、ただ知りたいからという場合もあるでしょうが、少なくとも二つのケースがあるでしょう。

一つは一人一人の女性が生き方を決めるときに、判断材料にする。これであれば、平均的な姿は問題ではなく、その方の条件に応じて考えればいいでしょう。女性が子供を産むか生まないかを自分の問題として、具体的に考えるのは、多分20をすぎてからでしょう。そのときに、自分の仕事の見通しなどをよく考えればいいのだろうと思います。ずっと勤続できるような会社に勤めているかどうか、本当にずっと勤め続けたいのかも含めて。

前々回のエントリでリンクを張った賃金構造基本統計調査は、学歴別、企業規模別の数字がありますので、自分の例を当てはめてみることも可能です。少し面倒かもしれませんが、いろいろ計算してみると思いがけない結果がでるかもしれません。

ただし、現在45歳から49歳の女性の賃金を、現在20歳の女性が25年後、29年後に受け取れると考えるのは、少し問題があります。年功序列賃金が修正され、将来は、もっと少なくなる可能性があります。逆に、2と25年の間にインフレでもあれば、もっと高い賃金を受け取れる可能性もあります。将来のことを完全に予想するのは、残念ながら不可能なのです。

もう一つは、自分の生活ではなく、社会の仕組みを考える場合もあるでしょう。「子育ては、1億8千万円の損」と説明される方は、おそらく女性に間違った情報を伝えて、人生を誤らせてやろうなどとは考えてはいらっしゃらないでしょう。もっとも、素朴に間違った情報ではないと考えているおそれはありますが。

たいていの場合、少子化対策の重要性を訴えたり、女性の生き方が制約されていることを訴えようとして、その根拠として、2億円対2千万円、というわかりやすい数字を持ってきているのだろうと思います。それが、ある意味で極端な例であることは明示せずに。

その善意は分かるのですが、それがどのような女性にも当てはまるもののように受け止められ、特に若い女性に子育ては損と思いこませる結果になっているとすると問題です。

社会のあり方を考えるときには、特定のモデルだけではなく、現実に子どもがいる女性の普通の姿(平均的な姿といってもいいでしょう。)、現実に子どもがいない女性の普通の姿がどうなっているかを調べてみるべきだろうと思います。

私は、その姿を調べれば、おそらく2億円対2千万円という差にはならず、ずっと小さな差だろうと思っています。

なぜか。子育てには、実際に支払わなければならない費用がたくさんあるからです。子どものいない方であれば払わなくていい生活費です。

この子育て費用をまかなうためには、両親が働く必要があります。母親もです。そして、子どもが小さいうちは働くのをセーブするでしょうが、子供に手が掛からなくなれば、母親は働き始めます。

一方、子どものいない女性は、配偶者の年齢が上がり、の給料が高くなるにつれて働く必要がなくなってきます。そして、現実に60歳まで働くことは少ないでしょう。現実に女性が仕事を持つ割合は、45歳ぐらいがピークで、その後は下がっていきます。

結果としては、一生の間を考えると、子のいる女性とこのいない女性の働き方、収入には極端に大きなそれほど大きな差はでないでしょう。

そして、こういう調査もあります。3回調査というのは、子どもが満2歳6ヶ月の時の調査、2回あるいは前回調査というのは子どもが満2歳6ヶ月の時、1回あるいは前前回調査は子どもが6ヶ月の時の調査です。同じ人を追いかけ続けるという珍しい調査です。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/syusseiji/03/kekka9.html

ほとんどの方が、子供が産まれていいことがあったと考えています。これは、時代が変わっても変わらないだろうと思います。

ついでですが、こちらも。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/syusseiji/03/kekka2.html

お母さんたちはかなり早めに働きだしています。

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