「
2016年4月分家計調査の検証」に続いて、勤労者世帯の5月分の検証をしたいと思います。5月分では消費支出が前年同月比名目3.3%、実質%減ったことが話題になりました。悲観的に捉えられているようです。
以下で見る通り、これは
自動車税の改正に伴う一時的な減少であって、基調は横ばい程度であったと考えるのが自然です。数字を見ていきましょう。名目値です。
5月分勤労者世帯の家計項目 | 2016年 | 2015年 | 増減 | 増減率 |
---|
実収入 | 426,805 | 430,325 | △3,520 | △0.8% |
うち経常収入 | 421,959 | 421,860 | 99 | 0.0 |
うち勤め先収入 | 415,139 | 414,862 | 277 | 0.1 |
非消費支出 | 113,425 | 102,450 | 10,975 | 10.7 |
可処分所得 | 313,721 | 317,317 | △14,496 | △4.4 |
消費支出 | 306,721 | 317,317 | △10,596 | △3.3 |
平均消費性向 | 97.9 | 96.8 | 1.1 | - |
まず、収入面から見ると勤め先収入はわずかですが増加しています。経常収入もほぼ横ばいです。実収入は0.8%減っていますが。
支出面を見ると、直接税や
社会保険料など非消費支出が10,975円、10.7%も増えています。実収入から非消費支出を差し引いたものが家計が自由に使える
可処分所得ですが、これは14,496円4.4%も減ってしまっています。消費支出が減るのはやむを得ないでしょう。10,596円、3.3%減っています。
可処分所得のうち消費に回った割合、平均消費性向は97.9%と前年を1.1ポイント上回っています。家計は
可処分所得の減少をそのまま消費削減につなげず、消費の安定、平準化を図ったといえるでしょう。
では、なぜ非消費支出は増えたのでしょうか?数字を見てみましょう。
5月分勤労者世帯の非消費支出項目 | 2016年 | 2015年 | 増減 | 増減率 |
---|
非消費支出 | 113,425 | 102,450 | 10,975 | 10.7 |
うちその他の直接税 | 37,257 | 28,164 | 9,093 | 32.3 |
うち公的年金保険料 | 29,783 | 27,548 | 2,235 | 8.1 |
その他の直接税と
公的年金の保険料の増加でほとんどが説明できます。実際
所得税は減っています。では増えた直接税は何か?5月が納期である個人に係る直接税といえば、
自動車税です。
自動車税は2016年度に
エコカー軽減分が重点化され(縮減され)ています。これが税の増加につながったとみるのが自然です。
自動車税は年に1回払うだけですし、実収入も特別収入が減ったために減っただけで、経常収入は増えているので、5月の消費減少は一時的な要因によるものと考えるのが妥当です。家計の消費動向を悲観的に見る必要はないでしょう。
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