毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2016年4月)

4月分が発表されました。注目していたパートタイム雇用は拡大です。 常用雇用は、全体では対前年同月比2.0%の増加です。15年1月以降、1.9%から2.3%の狭い幅の中で増加が続いており、2%程度が巡航速度になった感がありますが、中身が変わりつつあります。4月の内訳をみるとフルタイム労働者(一般労働者)の増加率が1.5%と前月より低下し、パートタイム労働者の増加率は3.3%と前月より他あくなっています。「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2016年3月)」で書いたように、このところ、フルタイム労働者の雇用の増加率が高くなり、パートタイム労働者のものが低くなってきていたのですが、やや巻き戻しという状況です。 常用雇用の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
15年1月2.01.13.9
2月2.10.84.9
3月1.90.64.6
4月2.01.33.8
5月2.01.43.5
6月2.11.14.4
7月2.00.94.7
8月2.00.94.7
9月2.01.33.9
10月2.21.34.5
11月1.61.14.5
12月2.32.44.4
16年1月2.11.43.6
2月1.91.92.3
3月2.11.92.8
4月2.01.53.3
総実労働時間は、常用労働者全体では1.5%の減少です。就業形態別にみると、フルタイム労働者が1.0%の減少です。2016年4月は2015年4月に比べて土曜日が1日多く、平日が1日少なかったことが影響していると思われます。パートタイム労働者は2.4%と大幅に減少しています。パートタイム労働者労働時間は短縮傾向にあったのですが加速しています。 総実労働時間の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
15年1月0.00.4△1.0
2月△0.20.5△0.5
3月1.52.3△0.3
4月1.21.5△0.2
5月△2.7△2.9△1.8
6月△0.10.4△1.2
7月△0.30.4△1.1
8月0.30.7△0.2
9月△0.9△0.6△1.3
10月△2.7△2.6△1.4
11月0.00.6△1.5
12月△0.20.2△1.0
16年1月△0.9△0.4△0.3
2月0.40.6△0.5
3月0.71.2△0.2
4月△1.5△1.0△2.4
常用雇用の増加率と総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、労働投入を考えますと、0.5%の増加です。パートタイム労働者の労働投入量は0.9%しか伸びていません。労働者数が増えているのは採用基準を引き下げ短時間しか働かないものを大量に採用しているせいかもしれません。 総労働投入の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
15年1月2.01.52.9
2月1.91.34.4
3月3.42.94.6
4月3.22.83.6
5月△0.7△1.51.7
6月2.01.53.2
7月1.71.33.6
8月2.31.64.5
9月1.10.72.6
10月△0.5△1.33.1
11月2.01.73.0
12月2.11.63.4
16年1月1.21.03.3
2月2.32.51.8
3月2.83.12.6
4月0.50.50.9
これに対して名目で見た一人当たりの平均賃金の動きです。現金給与総額は、常用労働者全体では0.0%の横ばいでした。フルタイム労働者は、0.5%の増加しましたが、パートタイム労働者は0.8%の減少です。しかし、パートタイムの所定内給与は0.9%の減少ですが、所定内労働時間はそれ以上に減少しています。2.5%の短縮です。1時間当たりの所定内給与では名目では1.6%、実質では1.9%の上昇です。パートタイム労働市場のタイト化が進んでいます。 名目賃金の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年12月1.31.8△0.4
15年1月0.60.90.3
2月0.10.60.8
3月0.00.60.6
4月0.70.91.3
5月0.71.1△0.6
6月△2.5△2.2△0.5
7月0.9(0.5)1.3(1.0)0.7(0.4)
8月0.4(0.2)0.7(0.4)1.7(1.4)
9月0.4(0.3)0.6(0.5)0.4(0.3)
10月0.7(0.4)1.1(0.8)0.1(△0.2)
11月0.1(0.3)0.7(0.3)△1.1(△1.5)
12月0.0(△0.2)0.4(0.2)0.5(0.3)
16年1月0.0(0.0)0.5(0.5)△0.3(△0.3)
2月0.7(0.3)1.0(0.6)0.8(△0.4)
3月1.5(1.5)0.81.5
4月0.0(0.3)0.5△0.8
(  )内は消費者物価指数帰属家賃を除く総合で実質化したもの。4月は0.3%の低下です。 賃金収入を試算してみると(やはり近似計算です。)全体は名目では2.0%と大幅な増加です。フルタイム労働者は2.0%の増加、パートタイム労働者は2.5%の増加です。帰属家賃を除く総合の消費者物価指数は0.3%の低下でした。 雇用者所得の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
15年1月2.62.04.2
2月2.21.45.7
3月1.9(△0.8)1.25.2
4月2.7( 1.9)2.25.1
5月2.7( 2.0)2.52.9
6月△0.4(△0.9)△1.13.9
7月2.9(2.6)2.25.4
8月2.4(2.1)1.66.4
9月2.4(2.3)1.94.3
10月2.9(2.6)2.44.6
11月2.1(1.7)1.6(1.2)4.6(4.2)
12月2.3(2.1)1.8(1.6)4.9(4.7)
16年1月2.1(2.1)1.9(1.9)3.3(3.3)
2月2.6(2.2)2.9(2.5)3.1(2.7)
3月3.6(3.6)2.74.3
4月2.0(2.3)2.02.5
毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年9月)」でも書きましたが、基本的には雇用が増加し、労働力の需給はタイト化してきていて、改善基調に変化はないというのが私の判断です。最近不調を伝えられている消費も安定した伸びに復帰するだろうと考えています。 人気blogランキングでは「社会科学」の番外位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング