毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2016年1月)

1月分の確報が発表されました。 常用雇用は、全体では対前年同月比2.1%の増加です。これで7か月連続の2.0%を超えです。内訳をみるとフルタイム労働者(一般労働者)の増加率が1.4%であり、パートタイム労働者の増加率は3.6%となっています。「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年12月)」で「いったいどこまで増えるのでしょうか?供給余力がどれだけあるのか、見当がつきません。」と書きましたが、1月は4%を割りました。 参考までに、季節調整値で前月比を見ると、全体では0.2%増加です。なお、今回季節調整値の変更がありました。遡って修正されています。前月比で見ると、10か月連続の増加です。 常用雇用の増加率(%)>
全体フルタイムパートタイム
14年12月1.71.22.8
15年1月2.01.13.9
2月2.10.84.9
3月1.90.64.6
4月2.01.33.8
5月2.01.43.5
6月2.11.14.4
7月2.00.94.7
8月2.00.94.7
9月2.01.33.9
10月2.21.34.5
11月1.61.14.5
12月2.32.44.4
16年1月2.11.43.6
総実労働時間は、常用労働者全体では0.9%の短縮です。就業形態別にみると、フルタイム労働者は0.4%の短縮、パートタイム労働者も0.7%の短縮です。カレンダーを見ると2016年は日曜日が1日増えています。 総実労働時間の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム14年12月△1.1△0.7△1.7
15年1月0.00.4△1.0
2月△0.20.5△0.5
3月1.52.3△0.3
4月1.21.5△0.2
5月△2.7△2.9△1.8
6月△0.10.4△1.2
7月△0.30.4△1.1
8月0.30.7△0.2
9月△0.9△0.6△1.3
10月△2.7△2.6△1.4
11月0.00.6△1.5
12月△0.20.2△1.0
16年1月△0.9△0.4△0.3
常用雇用の増加率と総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、労働投入を考えますと、2.1%の増加です。 総労働投入の増加率(%)>>
全体フルタイムパートタイム
14年4月0.70.42.9
5月0.60.32.3
6月2.02.02.7
7月2.42.12.8
8月0.1△0.20.5
9月2.21.92.7
10月2.12.21.4
11月△1.1△1.6△0.8
12月0.60.51.1
15年1月2.01.52.9
2月1.91.34.4
3月3.42.94.6
4月3.22.83.6
5月△0.7△1.51.7
6月2.01.53.2
7月1.71.33.6
8月2.31.64.5
9月1.10.72.6
10月△0.5△1.33.1
11月2.01.73.0
12月2.11.63.4
16年1月1.21.03.3
これに対して名目で見た一人当たりの平均賃金の動きです。現金給与総額は、常用労働者全体では12月と同じ0.0%の横ばいです。フルタイム労働者は、0.5%の増加、パートタイム労働者は0.3%の減少です。平均が横ばいとなったのはパートタイム労働者の賃金の減少と割合の増加によるものです。 しかし、パートタイムの所定内給与は0.1%の減少、所定内労働時間は1.4%の短縮ですから、1時間当たりの所定内給与では1.3%の上昇です。実質で見ても1.3%の上昇です。「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年11月)」でも書きましたが、賃金率が上がり雇用が増えているのですから、パートタイム労働市場の需給はタイト化しています。しかし、雇用は高い割合で増加し続けているので供給源が枯渇している訳ではありません。 フルタイム労働者の所定内給与は0.4%の増加、所定外給与は0.5%減少です。特別給与は4.1%の増加です。 名目賃金の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム14年12月1.31.8△0.4
15年1月0.60.90.3
2月0.10.60.8
3月0.00.60.6
4月0.70.91.3
5月0.71.1△0.6
6月△2.5△2.2△0.5
7月0.9(0.5)1.3(1.0)0.7(0.4)
8月0.4(0.2)0.7(0.4)1.7(1.4)
9月0.4(0.3)0.6(0.5)0.4(0.3)
10月0.7(0.4)1.1(0.8)0.1(△0.2)
11月0.1(0.3)0.7(0.3)△1.1(△1.5)
12月0.0(△0.2)0.4(0.2)0.5(0.3)
16年1月0.0(0.0)0.5(0.5)△0.3(△0.3)
(  )内は消費者物価指数帰属家賃を除く総合で実質化したもの。1月の指数は0.0%の横ばいでした。2月は0.4%の上昇です。 雇用者所得はどうなっているか、試算してみると(やはり近似計算です。)全体では名目では2.1%と大幅な増加です。フルタイム労働者は1.9%の増加、パートタイム労働者は3.3%の増加です。帰属家賃を除く総合の消費者物価指数は0.0%と横ばいでしたので、全体は実質でも2.1%と大幅な増加です。 雇用者所得の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年5月2.01.73.9
6月2.52.53.5
7月4.14.14.0
8月2.62.61.8
9月2.42.23.4
10月1.81.63.0
11月1.71.81.7
12月3.03.02.4
15年1月2.62.04.2
2月2.21.45.7
3月1.9(△0.8)1.25.2
4月2.7( 1.9)2.25.1
5月2.7( 2.0)2.52.9
6月△0.4(△0.9)△1.13.9
7月2.9(2.6)2.25.4
8月2.4(2.1)1.66.4
9月2.4(2.3)1.94.3
10月2.9(2.6)2.44.6
11月2.1(1.7)1.6(1.2)4.6(4.2)
12月2.3(2.1)1.8(1.6)4.9(4.7)
16年1月2.1(2.1)1.9(1.9)3.3(3.3)
毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年9月)」でも書きましたが、基本的には雇用が増加し、労働力の需給はタイト化してきていて、改善基調に変化はないというのが私の判断です。最近不調を伝えられている消費も安定した伸びに復帰するだろうと考えています。 ただし、完全雇用にあるとは考えていません。現在、低賃金の労働市場であるパートタイム労働市場では、1時間当たり賃金が1%強上昇すれば、労働投入量が3%強増加するという状態が続いています。本当に完全雇用になったら、賃金を上げても、中賃金、高賃金のフルタイム雇用に移るために、パートタイム労働者の雇用、そして労働投入は減るはずです。現状は完全雇用からなお遠いといわざるを得ません。 人気blogランキングでは「社会科学」の9位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング