パートタイム労働投入の時給弾力性

(2014年3月5日追記 2013年10-12月期を追加しました。) 「雇用と賃金を考える(2013年11月・パートタイム労働者)」で考えた弾力性について、少し検討してみました。 弾力性の定義ですが、次の通りです。 パートタイム労働投入量の増加率÷時給の増加率。 時給が1%増えるとパートタイム労働の総投入量が何%増えるかを示すことになります。 これを、具体的にどのようなデータで試算したかですが、 1 すべて厚生労働省の毎月勤労統計の指数を用いました。 2 すべて、事業所規模5人以上のものを用いました。 3 すべて、パートタイムのものを用いました。 4 労働投入量は総実労働時間×常用雇用です。 5 時給は所定内賃金÷所定内労働時間です。 今回計算したのはあくまで需要の反応、供給の反応が組み合わさって出来上がった過去の実績、結果です。理論的な供給の弾力性、需要の弾力性を表しているものではありません。 パートタイム労働投入の1時間当たり所定内給与弾力性
期間弾力性フルタイム労働者の常用雇用の増減
2001年4.27△1.4
2002年44.43△2.8
2003年130.54△2.8
2004年8.33△1.4
2005年△0.110.1
2006年0.890.4
2007年2.481.1
2008年0.552.0
2009年1.56△0.2
2010年△37.67△0.3
2011年上半期10.44△0.1
2011年下半期2.960.2
2012年1-3月9.440.1
2012年4-6月8.520.0
2012年7-9月4.79△0.2
2012年10-12月4.82△0.2
2013年1-3月2.83△0.6
2013年4-6月2.110.0
2013年7-9月5.940.0
2013年10-12月3.930.2
2013年10月5.720.2
2013年11月2.400.2
 これを見て気が付いたのですが、分母、分子ともに増加率ですので、両方とも結構不安定です。その割り算ですと、さらに不安定になります。指数が、小数点以下一桁なので丸めの誤差が不安定さに輪をかけます。また、賃金に変化がなかったとき、分母がゼロになるので、計算ができません。いささか使いにくい指標で、毎月計算してみても、あまり意味がなさそうです。3か月平均ぐらいは必要なようです。  ただ、この表からも秋にリーマンショックがあった2008年は所定内給与が上がってもほとんど投入が増えなかったのが、2009年にはやや増えるようになり、2010年には所定内給与が下がっても投入が大きく増えるという異常な事態に陥ったことが見て取れます。これはおそらくリストラなどでフルタイム労働者の雇用が減少し、①リストラされたフルタイム労働者がパートタイム労働市場流入してきた、②リストラされたフルタイム労働者の配偶者がパートタイム労働に就こうとした、③リストラされないまでも給与の減ったフルタイム労働者の配偶者がパートタイム労働市場に参入したなどの正の供給ショック(供給曲線の右シフト)があったためと思われます。  その後、2011年、2012年、2013年と労働投入の弾力性は小さくなる傾向にあります。2013年の第三四半期と10月はやや大きくなっていて、これはなぜなのかよくわかりません。しかし、11月にはかなり小さくなっています。  以上から、パートタイム労働市場は徐々にではあるがタイト化してきているとみていいと思っています。パートタイム労働の主な供給源である女性の就業率も過去最高になっています。2013年9月以降はフルタイム雇用が増え始めています。上で書いたパートタイム供給増加のメカニズムは、働きにくくなっていると思われます。今後、経済が安定して成長し、フルタイム雇用が順調に拡大していけば、この弾力性がさらに小さくなり、パートタイムの時間給の上昇は加速する可能性があります。これが、フルタイム労働の需要拡大につながっていけば、さらにいい状況になるでしょう。  大陸での鳥インフルエンザや半島での武力紛争など心配な要素はたくさんありますが、何とか安定的な成長経路に乗ることを期待しています。  なお、12月分の毎月勤労統計の速報はすでに発表されていますが、その分析はラスカルさんにお任せして、すでに「物価と給与の推移-2013年12月までのデータによる更新」を書かれています、私は確報が出た段階で、エントリーを起こそうと思っております。 人気blogランキングでは「社会科学」の19位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング