「政治思想の対立軸を考える。」再考その1

参議院選挙後、「政治思想の対立軸を考える。その1」で書いた問題について、時々考えています。もう少し、理論的に考えてみたい。

政治思想の一番基礎にあるのは、人間観でしょう。2番目なのか3番目なのか、順序が付けにくいのですが、社会における資源、資産の配分、所得の分配をどうやって決めるのかという問題と、国家と社会の関係であるような気がしています。

人間観について言えば、西欧的な自立した個人を良しとする立場と良くも悪くも日本的な人間があるように思えます。日本的な人間をどう定義すればいいのかよくわからにのですが。まあ、考えている途中ということで。権利、義務といった固い発想をするかどうかが関係があるような気がしていますが。

社会における資源、資産の配分、所得の分配について言えば、市場の機能、交換が原則であることに異論はないでしょう。ここに贈与、国家権力による強制的なものか、社会的な慣習などによるものかを別にして、ともかく贈与をどの程度加味するかが考え方の差のあるところでしょう。なお、社会的な圧力を気にせずに行われる完全に自発的な贈与は、誰でも認めるでしょう。問題になるのは、国家権力や社会の圧力、規制力によって程度の差はあれ、非自発的に行われる贈与です。再分配といってもいいでしょう。

国家と社会について言えば、ある種の共同体の問題があります。一応、国民国家を大きな共同体と考えれば、この大共同体以外の中小共同体の役割を積極的、肯定的にとらえるか、消極的、限定的に考えるか、感覚の差がかなりあるだろうと思います。ただし、完全に自由な意思に基づいて結成された共同体が、何ら政治的、経済的、社会的特権を持たず活動する段には、誰も否定することはないでしょう。これらの共同体に国とは別の役割を期待し、何らかの特権を与えることに関する感覚の差です。なお、国家を超える共同体、例えば宗教的な共同体のことは脇へ置いていくことにします。

これらを組み合わせると2の3乗で8通りの組み合わせができるのですが、そのすべてが対応する政治思想を持つとは限りませんし、有力な政治勢力を持つのははさらに減るでしょう。

西欧的な人間観+市場機能重視+中小共同体に対して消極的:古典的自由主義

西欧的な人間観+市場機能重視+中小共同体に対して積極的:対応するものなし

西欧的な人間観+再分配重視+中小共同体に対して積極的:NPO主義(?)

西欧的な人間観+再分配重視+中小共同体に対して消極的:大きな国家主義(?)

日本的な人間観+市場機能重視+中小共同体に対して消極的:日本的自由主義

日本的な人間観+市場機能重視+中小共同体に対して積極的:対応するものなし

日本的な人間観+再分配重視+中小共同体に対して積極的:保守主義

日本的な人間観+再分配重視+中小共同体に対して消極的:大きな国家主義(?)

中小共同体は基本的に再分配の担い手なのだと考えると、市場重視+中小共同体という組み合わせに対応するものはなさそうな気がします。同様に、再分配重視+中小共同体に対して消極的という組み合わせに対応するものがないかといえば、そうではなく、基本的に再分配は国家が担うという考え方が存在しえます。

西欧的な人間観+再分配重視+中小共同体に対して消極的:大きな国家主義(?)

日本的な人間観+再分配重視+中小共同体に対して消極的:大きな国家主義(?)

の二つは、うまく分けきれません。

日本的な人間観+再分配重視+中小共同体に対して積極的:保守主義

は、伝統的な地域共同体や農協、漁協、商工会、商工会議所など中小企業団体、業界団体などを重視することにつながり、伝統的な自民党勢力の基盤のような気がします。

西欧的な人間観+再分配重視+中小共同体に対して積極的:NPO主義(?)

NPOなどを重視し、新しい左派的な色彩が強くなるでしょう。

西欧的な人間観+再分配重視+中小共同体に対して消極的:大きな国家主義(?)

古い社会民主主義でしょうか。

日本的な人間観+市場機能重視+中小共同体に対して消極的:日本的自由主義

これも自民党の一つの流れでしょう。

ここで問題なのが新自由主義なのですが、これについては別に考えたいと思います。

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