「二院制とリスク管理」について

厭債害債さんが「二院制とリスク管理」次のような提案をされています。

ワタクシなりの代替案は、どちらかというと貴族院型に近いのですが、「議会」ではなく純粋なチェック機関を設置するというものです。そのメンバーは一定の(かなり難しい)資格試験をパスした一定以上の年齢の人々のプールから抽選で選ばれるようにすればいい。給与はほとんど実費程度でいい。おそらくそこに選ばれることは大いなる名誉となるでしょうし、日本人の性格からすれば、みんな喜んで受験して資格を得ようとするかもしれません。衆議院で通った法案について、チェック機関は一定期間以内に意見を具申する権利を有し、それがあった場合には、公開の場で議論を戦わせるようにする。ただし、民意によって選ばれた議会の決定は、その議会そのものが再度議決しなおさなければ変更されない。チェック機関はあくまでチェック機関にとどまる。そのようにしてあくまで一つの民意を尊重しつつ民意を離れた場所からのチェックも働かせるというが理想のような気がします。肝心なのは「民意」とは異なる基準で選ばれた(民意よりもある意味合理的な結論が導ける)メンバーによるチェックを受けることです。ねじれの問題は、有権者自身が抱える矛盾を突き付けられているのだと思います。今回「ねじれ解消」を目的に自民や公明に投票したとしたら、それは自ら抱える矛盾に目をつぶり、本質を議論せずつじつま合わせをしているに過ぎないのではないでしょうか。

これを読んだとき、思い出したのか加地伸行氏が「沈黙の宗教-儒教」で論じた2種類の政治家論です。氏のご意見を私なりに解釈すれば次のようになります。

中国と朝鮮そして明治期以降の日本では、試験を通った行政官、官僚が政治家としての役割を果たしてきた。日本においては、民選政治家と官僚政治家の二種類の政治家によって政策が遂行されてきた

明治憲法下では枢密院が山縣系官僚の牙城となり、議会をチェックしてたことも思い出されます。

かつては、官僚機構は「純粋なチェック機関」ではなく、純粋な提案機関でした。重要な法律や予算は官僚機構により提案がなされていたのです。官僚機構の「メンバーは一定の(かなり難しい)資格試験をパスした一定以上の年齢の人々のプールから」、官僚機構自身によって選ばれていました。「給与はほとんど」生活費プラスアルファ「程度」でした。

国家公務員上級試験に受かることは「大いなる名誉」だったのです。今での大学別の合格者がニュースになります。

「日本人の性格からすれば、(ある程度の学力がある人は)みんな喜んで受験して資格を得ようと」していました。

衆議院で通」すべき「法案について、チェック機関は一定期間以内に意見を具申する権利を有し」ていたといっていいでしょう。

ただ、「それがあった場合」にも非「公開の場で議論を戦わせ」ていたわけですが。

もちろん、「民意によって選ばれた議会の決定は、その議会そのものが再度議決しなおさなければ変更され』ませんでした。提案「機関はあくまで」提案「機関にとどま」っていたのです。

「そのようにしてあくまで一つの民意を尊重しつつ民意を離れた場所からのチェックも働かせ」ていたはずなのですが。

政治主導により、「肝心な」、『民意』とは異なる基準で選ばれた(民意よりもある意味合理的な結論が導ける)メンバーによるチェックを受けること」がなくなってしまいました。

厭債害債さんがおっしゃるように、「参議院は6年間身分が保証されますが、参議院でも党議拘束はありうるので、特に一党が大勝した場合にチェック機能が果たせるかどうか疑わしい。」としたら、ポスト政治主導期に見合ったチェックシステムを作らなければならないのかもしれません。

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