アベノミクスと財政再建

アベノミクス(ここでは安倍政権の取っている経済政策という意味で使います)と財政再建の関係を考えてみたい。

財政を再建するための方法には、大きく分けて支出を減らす、歳入を増やすという二つの方法があり、歳入を増やす方法としては、課税ベースを成長させる、課税ベースを制度的に広げる、税率を上げるという三つの方法があります。

24年度補正予算、25年度予算で予定されている財政出動は、財政再建に反するかのように見えます。

しかし、アベノミクスによって、デフレから脱却することができ、経済が名目値で成長するようになれば、課税ベース、個人、企業の所得、消費が成長します。国の税収ではありませんが、住宅、ビル、工場などが建設されたり、土地が値上がりし足りすれば固定資産税も増加するでしょう。24年度、25年度の財政出動だけであれば、将来の税収増加によってかなり対応することができそうです。

これに加えて、アベノミクスにより今年夏まで景気が回復していけば、26年度に予定されている消費税率の引き上げが円滑に行える可能性が高くなります。さらに成長軌道に乗せることができれば、27年10月に予定されている消費税率の引き上げも可能になるかもしれません。23年度の税収は全部合わせて43兆円ですが、そのうち消費税収入は10兆円です。24年度の見込みも変わりはありません。現在5%の税率が10%になれば、課税ベースに変化がなければ10兆円の増収です。24年度、25年度の財政出動で、税率引き上げに成功すれば、財政再建にはプラスでしょう。

もっとも、「インフレターゲット政策が失敗するとすれば」で書いたようにこの引き上げがインフレターゲット政策の失敗をもたらす可能性があります。したがって、26年度にも財政出動を行うほうがいいのではないかと、私は感じています。逆に、25年度には耐久消費財や住宅、先送りできない設備投資など、税率引き上げ前の前倒し購入が出てきそうなので、その分だけ手を緩めてもいいのではないかと考えています。

なお、一時的な効果ですが、24年度の税収には三つの効果が発生しそうです。

一つは、上場株の価格上昇の効果です。東証の第一部の株式時価総額は、360兆円ほどです。12年3月末は294兆円ですから66兆円ほど増えています。すべてが値上がりではありませんが、多くは値上がりでしょう。

子会社や関連会社の株式以外の売買目的で保有している株式、満期保有を目的としているものを除いた売買目的の債券は決算時に時価評価されるはずです。3月期決算で、評価益が出る企業が多いのではないでしょうか。また、既に売却により利益を出している企業も多いでしょう。売却益や評価益があっても赤字の法人や黒字を相殺するだけの繰越欠損がある法人は別ですが、黒字が増える可能性があります。黒字が増えれば法人税収は増えます。

もう一つは、債権の値上がりです。長期国債金利が低下しています。ということは債権は値上がりしているわけです。こちらも株式と同じ効果が発生しそうです。

さらに、円安により、企業の持つ外貨建て資産の値上がりも期待できます。

7月には結果が分かりますが、期待は持てます。

要約すると、アベノミクスには、一時的な支出の増加という問題はあるものの、課税ベースの成長という中長期的な増収策、消費税率の引き上げという永続的な増収策が組み込まれており、成功しさえすれば、財政再建に進むと考えていいでしょう。

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