インフレターゲット政策の落とし穴

インフレターゲット政策の理論と予想 その2」で書いたようなインフレターゲット政策が効果を上げていくとすれば、気になることがあります。

一般的には、長期名目金利と長期時間選好率、長期期待インフレ率の間にはつぎのような関係が成り立つことが望ましいのです。

長期名目金利=長期時間選好率+期待長期インフレ率

というのは、この関係が成り立っていると、次の関係が成立するからです。

長期実質利子率=長期名目金利-期待長期インフレ率=長期時間選好率

この関係が成立しているとき、限界的な固定資産への投資プロジェクトの期待収益率は長期時間選好率に等しくなります。収益率の高いプロジェクトから実施されていけば、投資せずに消費に回した時も、投資に回した時も同じ効用が得られる投資プロジェクトまでが実施され、それよりも低い収益率しか生まない投資プロジェクトは実施されません。これが望ましいことの理由です。

日銀が、長期間、名目短期金利を低い水準にくぎ付けすることがあらかじめ分かっていると、名目長期金利はどうなるでしょうか?

ある期間の名目長期金利は、その期間に予想される短期金利の平均+リスクプレミアムですから、名目長期金利は低下します。すると、次のような関係が成立する可能性が出てきます。

長期実質利子率=長期名目金利-期待長期インフレ率長期時間選好率

このような環境の下では、実質収益率が時間選好率よりも低いプロジェクトが実施されてしまう可能性があります。後になってみれば、「なんであんな投資をしてしまったんだろう。消費しておけばよかったのに。」ということになるということです。

このあたりは、よく注意してみておかなければならないでしょう。

人気blogランキングでは「社会科学」の番外でした。

今日も↓クリックをお願いします。

人気blogランキング