貿易の利益

もう少しがんばりましょう、日経新聞」で、交易利得の説明をしましたが、よく似た言葉に貿易の利益があります。

今、二つの国、A国とE国があるとしよう。便宜上、労働者の数はどちらの国も120人であるとする。また、二つの国は同じ財、X財とY財を生産しているとする。

生産技術には差があり、一方のA国では、X財を生産するのに3人の労働者が必要であり、Y財を生産するには6人の労働者が必要であるとする。他方、E国では、X財を生産するのに4人の労働者が必要であり、Y財を生産するには12人の労働者が必要であるとする。労働者一人当たりの生産性を考えると、どちらの財の生産についてもA国の方が高い。

さて、今、貿易が行われていないとする。A国では、60人の労働者がX財の生産に携わり、X財20単位を作り、残り60人がY財の生産に従事して、Y財10単位を生産しているとする。B国でも、60人の労働者がX財の生産に携わり、X財15単位を作り、残り60人がY財の生産に従事して、Y財5単位を生産しているとする。

ここで、両国の間で貿易が始まったとする。A国では、E国に輸出するためY財の生産を1単位増やすとする。増産のために必要な労働者は6人であり、この人数はX財の生産に当たっていた労働者を引き抜いて採用するとする。このため、X財の生産数量は2単位減少する。A国からY財を1単位輸入したE国は、Y財の生産を1単位減らし、その生産に当たっていた労働者12人をX財の生産に振り向けるとする。これによってX財3単位増産することができる。

E国はA国からY財を輸入しているので、その引き換えにA国にX財を輸出しなければならない。今、2単位を輸出したとする。このとき、両国で何が起こるだろうか?始めにA国の利用できる財を考えてみよう。X財は、自国で生産した18単位と輸入した2単位、合計20単位である。Y財は、自国で生産し、輸出せずに残してある10単位である。これは、貿易開始前と変わらない。次にE国の利用できる財を計算してみよう。X財は、自国で生産し、輸出せずに残してある16単位である。これは、貿易開始前より1単位多い。Y財は、自国で生産した4単位と輸入した1単位、合計5単位である。こちらは、貿易開始前と変わらない。この場合、貿易開始と労働者の配置を変えることにより、両国の生産量はX財1単位増え、それをE国が得たことになる。もし、E国がX財を3単位輸出したとしたら、増加したX財1単位は、A国のものになる。一方の国だけが得をするのでは、他方には貿易をする意味がない。したがって、現実には輸出されるX財は2から3単位の間で決まる。

このように貿易を行うことにより、労働者の配置の転換が行われ、両国を合わせた生産量が増加し、それが両国で分かち合われることになる。これが貿易の利益である。

平和な貿易は戦争ではありません。たがいに利益になる取引です。

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