計量経済学と公的統計

公的統計の調査票情報を利用して、計量経済学の手法で分析を行うということがよくおこなわれている。

これには、根本的な限界がある。政府の調査は基本的には、どうなっているか、何が起こっているかを統計表により示すことを目標にしている。その対象は、原則として、社会の基本的な事実であり、これを繰り返し行うことによって社会の動きも理解できるようになっている。

たとえば、国勢調査は、年齢、性別、地域別の人口を知るのが基本である。世帯、家族の関係様々な事項も調べられているけれども、基本は人口である。このようなことが分からなければ、主権者として国民が日本をどうするかを決めることは不可能である。

そのような統計表が有益であるから、権限や予算・人員が統計作成部局に与えられている。

全数調査や大規模な標本調査が行われるが、それは信頼できる統計表を作るためである。調査事項は集計され統計表になるものでなければならない。統計表にしないものを調査することはできない。大規模な調査であれば、回答者の負担や集計の費用も大きくなる。当然、調査項目は限定されたものにならざるを得ない。

これに対して、計量経済学の手法を用いた分析の目的は、なぜそうなったか、そうなっているのか、原因を探ることにある。この様な分析ための調査は、サンプルサイズは小さくてもいいが、調査項目は多くなければならない。被説明変数、説明変数、コントロール変数として用いることのできる調査項目が多いほど、正確な分析ができるのである。

すると、公的な統計を作る調査で集められた調査票情報は、多くの場合、計量経済学の手法を用いた分析を行うためには不十分なものになる。これは必然的な結果なのである。

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