運用でいいのか?

毎日新聞のこの社説に強い違和感を感じました。

社説:国の出先改革 法案提出の約束を守れ

毎日新聞 2012年08月02日 02時33分

 国の出先機関の地方への移譲の行方が極めて危うくなっている。野田佳彦首相は今年1月の施政方針演説で今国会に関連法案を「提出いたします」と約束したが、会期が延長されてもまだ実現していない。

 分権改革を進めるうえで出先改革は越えねばならぬハードルだ。野田内閣が消費増税を図る中、「身を削る改革」としても不可欠なはずだ。にもかかわらず中央官庁や民主党内の抵抗に屈しては、身内への甘さを自ら認めるようなものだ。

 国家公務員約30万人のうち約20万人は出先機関に属する。業務の多くは地方へ移譲可能で、自治体との二重行政も指摘されている。民主党は09年衆院選政権公約で「原則廃止」を打ち出していた。

 政府は国土交通省地方整備局、経済産業省経産局、環境省地方環境事務所の3機関の地方への移譲をブロック単位で可能とする方向で政府案を取りまとめている。だが、関係府省が国交省を中心に抵抗したため骨抜きが進み、すでにかなり後退した中身となっている。

 出先から地方に移される事務のほとんどは国から受託する「法定受託事務」とされ、国の指示や許認可が可能となる。移譲する事務は政令で定められ、丸ごとの移譲ではなくなった。事務を移譲する計画も首相が認定するなど二重、三重に国による統制の縛りがかけられた。

最後まで調整が難航した大規模災害時の国による指揮・監督はさすがに見送られそうだ。国と地方を上下関係に置くような制度を認めず、運用で対処することは当然である。

国が出先機関を地方に移譲した後で、現実に大規模災害が発生したとします。

自衛隊などの組織を別にすれば、国の人間は地方にいませんから、国が地方公共団体を指揮、監督できないのであれば、何もしないか、地方公共団体にお願いをするしかありません。

運用で対処するというのはそういうことでしかありません。誰が責任をとるのでしょうか?国からいえば、「お願いをしただけです。最終的な決定をしたのは地方公共団体ですから、責任はあちらにあります。」となるでしょうし、

地方公共団体からいえば、「国にお願いをされたからやったので、責任は国にあります。」となるでしょう。

そんな体制で、不測の事態が次々に起こる大規模災害にうまく対処できるのでしょうか?

そもそも、大規模災害への対処を運用でやれということは、大規模災害が起こったときの行政を国会が統制しないことを意味します。そんなことでいいのでしょうか?

責任と権限の明確化は、組織の効率的な運営に不可欠なのです。

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