「
消費者物価指数」の続きです。22年4月分の
消費者物価指数が発表されました。総合でみると99.9で前年同月比0.3%の上昇です。
1月から4月までの平均をとると前年の1月から4月までに比べて0.1%の上昇です。
22年平均が21年平均に比べて2.5%上昇するためには、5月から12月まで平均して3.7%上昇する必要があります。
平成17年基準消費者物価指数 | 22年 | 23年 | 上昇率(%) |
---|
1月 | 99.4 | 99.4 | 0.0 |
2月 | 99.3 | 99.3 | 0.0 |
3月 | 99.6 | 99.6 | 0.0 |
4月 | 99.6 | 99.9 | 0.3 |
5月 | 99.7 | - | - |
6月 | 99.7 | - | - |
7月 | 99.2 | - | - |
8月 | 99.5 | - | - |
9月 | 99.8 | - | - |
10月 | 100.2 | - | - |
11月 | 99.9 | - | - |
12月 | 99.6 | - | - |
年平均 | 99.6 | 102.1(仮定) | 2.5(仮定) |
ところで、現在の
消費者物価指数は平成17年を基準とするものです。この基準年は5年ごと、西暦の末尾が0、5となる年に切り替えられます。そして、翌年夏から新しい基準年のものが発表されます。そして今年の夏には平成22年基準のものが発表されます。詳細はこちら。
http://www.stat.go.jp/info/guide/public/cpi/index_p.htm
さて、切り替えられると物価の上昇率は低くなる可能性が高いのです。こういう仕組みが働くからです。
1 消費者はある商品、Aとしましょう、と別な商品、Bとしましょう、の両方を買うとします。
2 消費者は最初に商品Aと商品Bの値段を比較します。商品Aが50円、商品Bが100円だったとします。この値段を見て消費者は商品Aを60単位、商品Bを40単位買うことにしたとします。
3 さて、次の時点で、商品Aが60円に値上がりし、商品Bが90円に値下がりしたとします。この場合、普通であれば消費者は商品Aを買う量を減らし、商品Bを買う量を増やします。商品Aを50単位、商品Bを50単位買うようになったとしましょう。
4 そして、その後も、商品Aは値上がりし続け、70円になり、商品Bも値下がりしつづけ、80円になったとします。やはり普通であれば消費者は商品Aを買う量を減らし、商品Bを買う量を増やします。商品Aを40単位、商品Bを60単位買うようになったとしましょう。
5 ここで最初の時点を基準にした消費者物価を計算してみます。
(1)まず、最初の時点でどれだけお金を使ったかを計算します。式で表すとこうなります。
お金を使った額=商品Aの値段×商品Aの購入量+商品Bの値段×商品Bの購入量
この例では50円×60単位+100円×40単位=7,000円となります。
(2)次に商品1単位当たり平均して値段がいくらであったかを計算します。
平均した値段=お金を使った額÷買った商品の単位数です。
この例では7,000円÷(60単位+40単位)
=7,000円÷100単位
=70円です。
(3)次に、2番目の時点で、仮に最初の時点と同じ量の商品を買ったとしたらいくらかかったか、どれだけ必要だったかを計算します。
式で表すとこうです。
必要額=2番目に時点での商品Aの値段×最初の時点での商品Aの購入量+2番目の時点での商品Bの値段×最初の時点での商品Bの購入量
今の例では、60円×60単位+90円×40単位=7,200円となります。
(4)同じように商品1単位当たりの必要額を計算します。
7,200円÷100単位=72円です。
(5)次に最初の時点から第2の時点までの物価の上昇率を計算します。
2番目の時点での平均した値段-最初の平均した値段=値段の変化幅
物価上昇率=値段の変化幅÷最初の平均した値段
例では値上がり幅は、72円―70円=2円です。
元の値段は70円ですから、物価の上昇率は2円÷70円=2.9%となります。
実は、これは第2時点での必要額が最初の時点での購入額からどれだけ変化したかを示すものです。
つまり、
物価上昇率は最初の時点と同じものを買うためには、どれだけ必要な額が変化したかを示すものです。
(6)次に、3番目の時点で、仮に最初の時点と同じ量の商品を買ったとしたらいくらかかったか、どれだけ必要だっ
たかを計算します。
式で表すとこうです。
必要額=3番目に時点での商品Aの値段×最初の時点での商品Aの購入量+3番目の時点での商品Bの値段×最初の時点での商品Bの購入量
今の例では、70円×60単位+80円×40単位=7,400円となります。
(7)同じように商品1単位当たりの必要額を計算します。
7,400円÷100単位=74円です。
(8)第2の時点から第3の時点までの物価の上昇率を計算します。
(74円―72円)÷72円=2.8%
となります。
さて、この
物価上昇率は、あくまで
最初の時点の購入量を基準としたものです。
これとは別に第2の時点の購入量を基準とした
物価上昇率を計算することもできます。やってみましょう。
(9)第2の時点で実際の購入額を計算します。
実際の購入額=商品Aの値段×商品Aの購入量+商品Bの値段×商品Bの購入量
この例では60円×50単位+90円×50単位=7,500円となります。
(10)次に商品1単位当たり平均して値段がいくらであったかを計算します。
平均した値段=お金を使った額÷買った商品の単位数です。
この例では7,500円÷(50単位+50単位)
=7,500円÷100単位
=75円です。
(11)次に、3番目の時点で、仮に第2の時点と同じ量の商品を買ったとしたらいくらかかったか、どれだけ必要だったかを計算します。
式で表すとこうです。
必要額=3番目に時点での商品Aの値段×第2の時点での商品Aの購入量+3番目の時点での商品Bの値段×第2の時点での商品Bの購入量
今の例では、70円×50単位+80円×50単位=7,500円となります。
(12)同じように商品1単位当たりの必要額を計算します。
7,500円÷100単位=75円です。
(13)次に第2の時点から第3の時点までの物価の上昇率を計算します。
2番目の時点での平均した値段-最初の平均した値段=値段の変化幅
物価上昇率=値段の変化幅÷最初の平均した値段
例では値上がり幅は、75円―75円=0円です。
元の値段は75円ですから、物価の上昇率は0円÷75円=0%となります。
この
物価上昇率が、
第2の時点の購入量を基準としたものです。
このように、同じ期間の
物価上昇率であっても、購入量の基準をどの時点の実際の購入量とするかによって、数字は変わります。
一般的には、基準を新しくすると物価の上昇率は下がります。これは、相対的な物価の変動にトレンドがあること、消費者が相対的に安くなったものを多く買うという行動をとること、二つの条件が成り立つときに起こります。
17年から22年への切り替えでどれだけの変化が生じるかはわかりませんが、この点に注意が必要です。
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