女性の結婚、出産と仕事

学歴と仕事」に続いて、厚生労働省の第8回成年者縦断調査(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/judan/seinen11/index.html

の紹介です。

女性にとっては、就職できるかどうかがまず第一の関門ですが、就職した後、結婚したり出産したりしても就業を継続できるかどうかが大きな問題でしょう。これは,どちらかと言えば雇われて働いている女性、特に、正規労働者の場合に大きな問題になると考えられます。

家族従業員なら子育てが終わってまた働き始めるのはそう難しくないでしょう。また、パートタイムで働く場所が多く、一度辞めても、働く気になれば比較的容易に探せるのであれば問題は深刻ではありません。もっとも、「小さな子どもがいる人は休みがちだからだめ」というようなケースはありますので,問題が全然ないと言うことではありません。

男性にとって安定した仕事があることが,結婚への道であったのですが、女性にとっては本来めでたいことであるはずの結婚や出産が仕事の安定の障害になりえます。

正規であった方が、結婚や出産の後、同一就業を継続した割合を見ていきます。これが就業継続へのインパクトを示す指標でしょう。同一就業継続というのは勤め先も就業形態も変わっていないということです。勤め先は変わっていないけれど正規から非正規に変わったというケースがあるようですが、これは、ここで言う同一就業継続ではありません。

11ページの表9と図9がこの調査の第1回の時点で独身、その後結婚した女性で、結婚前に仕事をしていた人を取り出し、結婚後、就業の状況がどう変化したかを調べたものです。結婚前に正規であった女性の同一就業継続の割合は、64.3%です。正規の女性の3分の2は同一就業を継続している、一つ目のハードルを越えているといっていいでしょう。逆に言えば3分の1は継続していないわけです。私は、もっと継続率が高いと予想していたので意外でした。なお、非正規では44.5%です。

この結婚というハードルを超えても、その次には,第1子出産という第2のハードルがあり、それを飛び越えると第2子出産というハードルがあります。それを超えると第3子です。

正規の方が第1子出産後、同一就業を継続した割合は図10にあります。62.4%です。

結婚の効果とほぼ同じです。第2子出産では、78.6%と第1子出産よりかなり高い割合で同一就業を継続しています。そして第3子以降では75.5%とやはりかなり高い割合です。

では、これを単純に第2子以降はインパクトが弱い,あるいは簡単に乗り越えられると考えていいのかというと,厳密にはそうでもありません。第1子出産以降正規であった方だけについての割合であるからです。つまり、何らかの意味で正規を継続しやすい,あるいは継続の意志の固い女性を選び出して、その女性の継続率を考えているからです。

そういう厳密な議論をするのはやめて、いささか乱暴に言うと、結婚で3分の2になり,第1子出産でで10分の4になり、第2子で10分の3になるといった感じです。第1子のハードルを超えられるかどうか子供を産んでも続けられるかどうかの分かれ目です。

さて、子供を産んでも辞めなくていいようにするための政策手段が2つあります。

育児休業制度と保育所です。

育児休業制度の効果が13ページの表11と図11で示されています。

育児休業制度があり、しかも、利用しやすい雰囲気がある場合には,同一就業継続率は87.9%です。10人のうちやめるのは1人だけです。どちらとも言えない場合は、75.0%です。これに対して制度があっても利用しにくい雰囲気がある場合には50.0%です。制度を作ることは重要ですし、そして制度に魂を吹き込むことがさらに重要です。魂の吹き込まれた制度があれば同一就業継続に有効であることは間違いありません。もし、すべての女性の職場でこうなっていれば、第1子を産んだ後で半分以上の方が正規を継続できることになります。

保育所の利用状況が14ページの表12と図12です。親の支援のない正規労働者が利用しているのは認可保育所です。

次回は、このような継続就業のしにくさが女性の所得にどのような影響を与えているかを検討します。

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