電力不足対策

今回の震災で電力の不足が生じています。対策を田中淳夫さんのブログの「木材の震災需要を逃すな」のコメント欄で田中さんや沢畑さんとのやり取りしていたのですが、コメント欄をたびたび利用させていただくのも気が引けてきましたので、こちらでまとめておきます。

電力の不足対策を考えていました。整理してみると、大きくは

1 今ある設備でできること

2 短期間で建設できる設備でできること

3 建設に長期間かかる設備でできること

の3つに分けられそうです。

1 今ある設備でできること

現在、ごみ発電というのが行われています。ごみを焼却するときの熱を使った発電です。発電量はごみの量とごみの質に左右されます。紙などは熱量が小さく、プラスチックなどは高い。ゆえにプラスチックを燃やすときの発電量は大きくなります。作った電力は一部は電力会社に売られています。

これは通常ごみの量に合わせて発電していて、常に設備の許す最大限の発電をしているわけではないようです。緊急事態ですからごみの収集を強化して発電量を増やすという手段がとれます。そして、この増加分を電力会社に売れば電力会社の供給力が高まります。

これは、今直ちに使える手段です。電力需要のピークとなる時間に発電するようにすれば効果的でしょう。

また、東北地方の被災地との交通路が回復してきています。そして被災地には山のようなゴミがあり、処理しきれません。生ごみは無理ですが、木質やプラスチックのごみを運んできて発電するという方法もとれるかもしれません。

2 短期間で建設できる設備でできること

小規模な1,000khぐらいの木質発電所を数多く作るという方法があります。東北電力東京電力の供給地域内の青森、秋田、山形、長野、山梨、栃木、群馬には間伐されていない造林地がきっとたくさんあると思います。また、これらの県には、売れ残りの工業団地がいっぱいあるでしょう。小型のものなら1年もあれば作れる様な気がします。

同時に大量に建設すれば価格も安くできるかもしれません。1県20か所として140か所作れば14万KWになります。これなら今年の夏は無理でも次の冬には間に合うかもしれません。

ただ、田中さんご指摘の通り、分散型の小型発電システムを考えると、発電効率は落ちるから、その分をコジェネで温水供給でおぎなう必要があります。山から木を出して燃料にしたら、かなり高くつくという問題もあります。量も十分あるかどうかが問題です。

山の中に発電所を作るという手もあるのですが、すると温水を供給しても利用者がいるかどうか。山間の温泉地なら温泉を加熱したり、旅館やホテルの冷暖房に使えるかもしれません。

もう一つ考えられるのは、田中さんご提案です。東北地方の被災地に木質発電所を作るという案です。被災地に作って被災地の廃材を燃やす。確かに2~3年燃やすぐらいありそうですし、そして温水も供給すると、東北の暖房システムから灯油の割合を減らすことが可能になるかもしれません。これができれば採算が合い安いでしょう。廃材が尽きたら林地残材の可能性も出てくるそうです。

なお、沢畑さんから実践的なご意見を頂きました。「小さめの木材発電プラントで廃材を処理というのができればいいのですが。グラップルを扱える人間を派遣する必要もありそうですね。当方の林業女子・林業おやぢなどは役に立ちそうです。」 ぜひ、ボランティアをお願いしたいです。

ちょっと気になるのが、廃材の種類が多様であることです。これが発電に障害にならないといいのですが。

田中さんの「復興ではなく、新たな社会づくりにつなげるためにも、東北をバイオマス発電先進ゾーンにするプランニングをしてほしい。」、「東北をコジェネ王国に造り替えるマスタープランを立てるべき。それこそ夢を与える効果もあります。」という案は魅力的です。

ただ、今、直ちに被災地に作るとなると、道路を直して、資材を運んで、余震の続く中で建設するということで、かなり難しいかもしれません。仮設住宅の建設などとも競合するでしょうし。被災地の外で建設するほうが容易でしょう。

私が、短期にこだわっているのは、「去年の夏は日本人には暑すぎた。熱中症の死者激増」のように、この夏、あるいは来年、再来年の夏に電力供給が不足しクーラーが使えないと老人の死亡が増えるという危惧を持つからです。

特に、被災地に建てられる仮設住宅は気密性、断熱性が低く、しかも家族人数の割に狭いので、一方では冷房の必要性が高く、他方、冷房の効率が悪いという問題があるからです。まして、仮設住宅の建設が間に合わず、体育館などの避難所に住み続けることになると、年寄りや乳幼児はクーラーがないと大変だと思います。

この際、田中さんご提案のようなシステムを、ある程度規模の大きな病院や介護施設に作るといいのではないでしょうか。こういう施設なら24時間空調を使いますし、温水もすぐに使うのではないかと思います。こういう施設は、沢畑さんの言われる「災害には強い」システムを、特に必要としています。東北の病院などで、そういう施設を作るところに支援するのもいいかもしれません。

この夏の電力不足を少しでも解消するためには、効率が悪くても、早く作れる発電所が必要です。

別に木質バイオに限る必要はありません。太陽光発電でもガスタービン発電でもいいのです。そのような設備投資を進めるためには、東北電力東京電力が3年から5年の間売電価格を引き上げるべきです。それを国が保証しても補助してもいいでしょう。今なら、設備投資して作った電力を電力会社が高く買い上げてくれるという確信を与えるべきです。

3 建設に長期間かかる設備でできること

沢畑さんのご指摘の通り、「今回の電力不足の原因は集中型の電力供給システムにもあります。少数の大規模発電を作るのではなく、多数の小規模発電所を作る方が災害には強いわけです。」が、田中さんの主張されるように、「今のところ、安定した発電システムは、火力しかないでしょう。火力発電を増強するとCO2の排出が問題になるのだけど、国際公約は別として、一カ所から排出する発電所は回収もやりやすいはず。それに火力は、木材混焼にも使えます。一方で、分散型の小型発電システムを考えると、発電効率は落ちるから、その分をコジェネで温水供給でおぎなわないと。その点、東北は寒い冬(暖房期間)が長いから、かなり有効ですね。」というのも事実です。

長期的にベストの組み合わせが何かということを考える必要があります。まさにマスタープランです。

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