労働力調査が発表され、
完全失業率の上昇が話題になっています。(
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm#01)
完全失業率を理解するためには、完全失業者、就業者、
労働力人口を理解する必要があります。
完全失業者というのは、
(1)仕事をしていない
(2)仕事に就くことができる
(3)仕事を探している
という三つの条件をすべて満たしている人です。
就業者というのは、仕事をしている人です。
労働力人口というのは完全失業者と就業者を合わせたものです。
完全失業率(%)=完全失業者÷
労働力人口×100
=完全失業者÷(完全失業者+就業者)×100
働いていない人は、完全失業者か非
労働力人口です。
非
労働力人口というのは二つに分けることができます。
一つは、
(1)仕事をしていない
(2)仕事に就くことができない
という人です。
もうひとつは
(1)仕事をしていない
(2)仕事に就くことができる
(3)
仕事を探していない
人です。
最後のグループは曲者です。仕事を探さないといっても、
(1)本当に働きたくない、働く必要がないから仕事を探さない
(2)探しても探しても仕事がみつからなかったのであきらめてしまい、仕事を探していない
(3)探してもどうせ見つかりそうにないから探さない
と、いろいろなケースがあります。
不況が長く続くと、失業していた人の中から(2)や(3)で仕事を探すのをやめる人が増えます。こういう人が増えると、人口が一定でも
(1)非
労働力人口が増え、
(2)
労働力人口が減り、
(3)完全失業者が減る
ので、
完全失業率は低下します。こういうときは
完全失業率は低下は
労働市場の状態が良くなったことを意味しません。
このとき役に立つのは就業率(%)=就業者÷人口×100です。
この就業率に面白い現象が発生しています。25から34歳の男女の動きです。
男性の場合、みんな学校を出て働いている時期です。男性の中で就業率が一番高いのは、家族を持って責任が重く、病気などもまだ少ない(病気への道をたどっている人は多いのでしょうが、)35から44歳です。不況の2009年でも92.6%という非常に高い率になっています。これに次ぐのが45歳から54歳で92.5%です。これらの層でも長期的には下がってきているのですが、25から34歳という本来なら若手社会人になって元気に働いているべきずの層の就業率が低下しています。1998年には92.8%だったのが、2009年には89.1%に下がっています。一貫して下がっているのではなく、2003年まで下がり、そこから2007年まで回復して再び下がっています。構造的な問題というよりは、
景気循環の影響でしょう。働きたいたいけれど働けないという状況です。
25歳から34歳年 | 男性就業率(%) | 女性就業率(%) | 男女差(ポイント) |
---|
1998年 | 92.8 | 59.0 | 33.8 |
1999年 | 91.9 | 59.3 | 32.6 |
2000年 | 91.8 | 59.8 | 32.0 |
2001年 | 91.1 | 60.8 | 30.3 |
2002年 | 90.1 | 61.2 | 28.9 |
2003年 | 89.9 | 62.0 | 27.9 |
2004年 | 90.0 | 63.6 | 26.4 |
2005年 | 90.0 | 64.0 | 26.0 |
2006年 | 90.5 | 65.1 | 25.4 |
2007年 | 91.0 | 65.7 | 25.3 |
2008年 | 90.6 | 66.3 | 24.3 |
2009年(☆) | 89.1 | 67.4 | 21.7 |
☆2009年は2008年12月から2009年11月までの平均です。
一方、女性はさらに大きな変化をしています。もともと女性の就業率が一番高いのは、45歳から54歳、次いで34から44歳でした。25から34歳は低いほうだったのです。それが、この層の就業率は一貫して上昇を続け、2004年には35から44歳を追い抜き、その後も水をあけていっています。
働く上での障害がなくなったことも原因でしょうが、未婚、晩産化の影響もあると思います。また、男性の雇用の悪化により、パートにも出ない本格的専業主婦への門が極めて狭くなったことも原因でしょう。働かざるを得なくなったという側面もあると思います。この年代の女性の3人に2人は働いているという状況です。
必然的に男女差は縮まっています。1998年には33.8ポイントあったのが、2009年には21.7ポイントまで減りました。
しばらくの間は差はさらに縮まっていくのではないかと思います。
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